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実際に合格した私が語る、東大推薦入試の仕組みと対策

2019年05月09日 | 東京大学

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「東大推薦」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。

なんとなく「スーパー高校生」が受ける入試であると思う方が多いかもしれない。

数学オリンピック金賞、科学の甲子園で優勝などなど…….。

しかし、東大推薦を受験した私が見た推薦生の姿は、皆さんが思い浮かべるイメージとは少し違う。

私が見聞きした推薦生が行ってきた高校での活動は実に多彩である。

高校生の時に大会やコンテストで優秀な成績を取った者もいれば、大学や高校で研究に没頭してきた者、留学して勉強、研究をしてきた者などがいた。

推薦生の共通していることは、「スーパー高校生」であるということではなく、自分の興味に対して突き詰めた経験がある、ということだろう。

これを読んでいる方の中には、自分には関係のない話だと思われている方もいるだろう。

しかし、少しこの記事に立ち止まって、東大を目指している人でなくても読んでみて、自分の推薦入試の可能性を探ってみてほしい。

そして、この入試制度を通して、東京大学が今の高校生に伝えたいメッセージを是非知ってほしい。

1.推薦入試という選択

大学受験のカタチとして、主に一般入試、AO入試、指定校推薦、公募制推薦がある。

学校の授業や定期テスト、全国的な模試などなど…….受験生が勉強するといったら、その多くは一般入試に向けた勉強だろう。

これを読んでいる高校生も含め、全国の受験生が一般入試に向け、日々努力を積み重ねていることだろう。

一般入試は、学校の授業、塾、テストの見直し、参考書、ネットで流れている勉強法などを利用して対策ができる。

このように対策方法が明確にあるのは、一般入試は一元的に受験生の能力を評価するからであろう。

勉強方法にある程度「型」があるのは、受験生にとって嬉しいことかもしれない。

その反面、点数という「一元的なものさし」でしか評価されないので、受験生の多様な能力を評価することはできない。

これに対して、一般入試では評価できない受験生の能力を評価できるのが推薦入試である。

推薦入試は多元的に受験生の能力を評価する。

だから、受験生の多彩な能力を見落とすことなく評価することができるのだ。

ここでは推薦入試を選択し、受験するメリット、デメリットを考えてみる。

メリット

  • 勉強以外に高校で頑張った事を活かして受験できる。
  • 受験回数が増え、合格するチャンスが増える。
  • 一般入試では難しいかな……。と思う大学でも推薦入試なら比較的チャレンジしやすい。

デメリット

  • 受験勉強と並行して推薦入試の対策(小論、面接など)をする必要があるので、大変。
  • 周りが受験勉強している中で、推薦対策をしていると焦りが出てメンタル的にキツイ。
  • 高校中に勉強以外の事に目を向けれていない高校生にとっては出願は厳しい。

一般入試と同様に、推薦入試にも以上のような一長一短がある。

推薦入試を考えている受験生に注意してほしいのは、推薦入試を受けようとしても自分の受験プランの中心に必ず一般入試を置くことだ。

いくら推薦入試と言っても、やはり基礎にあるのは日々の勉強である。

一般と推薦の両立ができるか自分の体力、気力と相談しながら、受験プランを立てよう!

高校1、2年の時に、是非やってほしいこと

この記事を読んでくれている方の中には、受験生に加え、高校1、2年の方もいるだろう。

勉強、部活、遊びに日々忙しいことだろうが、それに加えて時間を割いてほしいことがある。

それは、どんなことに自分は興味があるのかを探すこと、そして、自分の興味のある分野を学校の授業外でどんどん突き詰めることだ。

この2つに時間を使っても、必ずしも推薦入試に役に立つとは限らない。

ただ、自分の興味が分かっていれば、大学選択も容易になるし、目標ができ勉強のモチベーションにも繋がる。

また、自分の興味のある分野があるのであれば、少し背伸びをして、知識や経験をどんどん身に着けてほしい。

別に難しいことをする必要はない。

ネットで興味のあるニュースを見る、大学の研究室を簡単に調べてみる、学校の掲示板に目を向けて面白そうな講演会やイベントに参加してみる、など手に届くことからでかまわない。

意欲のある人は、大学が主催している高校生向けの講座に参加したり、留学に挑戦してみることも全然ありだろう。

大学によってGlobal Science Campasを開催している所があるし、飛び立て 留学JAPAN などを利用してみよう。

学校の授業外で勉強して経験を積むことは、受験生になった時、推薦入試をいう選択肢が生まれるし、何より目的意識を持って受験勉強をすることができる。

以上の事をしていて、周りから意識高い奴だと思われても気にする必要はない。

その経験は近い将来必ず活きてくる。

時間の余裕がある高校1,2年の時は、いろんなことに挑戦してみよう!!

2.東大推薦について

東大推薦は平成28年度から始まった比較的新しい入試制度だ。

この入試制度の主な特徴は以下の3点だ。

Ⅰ.定員100名に対して170~180人程度が出願するが、過去4年間で最終合格者は100人に満たない。

平成31年度においては過去最低の66人だ。

Ⅰのような事が起こる原因として、東京大学は次のように分析している。

「私たちの求める学生像が高校側に十分伝わっているのか、検討課題として残っている。推薦入試で(入学者に)望んでいるのは多様性、卓越性、潜在性だが、卓越性だけが受け取られているのではないか。」

(引用元 高校生新聞 online                                         )

冒頭にも述べたが、東大推薦というと「スーパー高校生」のようなイメージが付きやすい。

東大推薦を考えている方には、まず東大推薦要項の全てに必ず目を通してほしい!

東大が求めている学生像を要項からしっかりと読み取ろう!

Ⅱ.各科類に出願する一般入試とは違い、推薦入試は各学部に出願する。

通常東大では、一般入試で入学したら、全員1,2年次は教養学部に入る。

教養学部に入ったからには、幅広く、自分の興味のある授業を取り、のびのびと勉強したいものだ。

だが、実際は少し違う。

2年次の進学選択制度において成績によって行ける学部学科が決まるので、多くの東大生はテストの点数に気を配り、単位の取りやすい授業を探して受けている人が多い。

それに対して、推薦生は自分の行きたい学科を選ぶことができるので、テストの点数や単位の取りやすさなどをあまり気にすることなく、1、2年の時は自分の興味のある勉強や活動をすることができる。

これは推薦生特有の大きなメリットだと言えるのではないだろうか。

Ⅲ.推薦生ならではの教育制度

授業、履修などで助言、相談をしてもらえる教員が個別につく、本来なら3年次以降に取る専門授業に参加でき単位を取得できるなど入学後に推薦生ならではの教育制度が準備されている。

Ⅲにおいては、全学生に対して圧倒的に少ない推薦生に相談や助言を下さる教員がついて頂けるのは入学してからとても心強い。

また、長期休暇の時に、個別について下さる教員や他の教授の研究室にインターンシップをすることも可能かもしれない。

他にも、学部によっては、専門授業を受けることができたり、推薦生向けの実習が用意されていたりと、自分の好きな分野がある人にとっては嬉しい制度が用意されている。

学部毎に違うので是非、東大推薦要項を見てみてほしい。

以上が主な東大推薦の特徴だ。

とても特徴が強く、思い切った入試制度であることはお分かりいただけたと思う。

合格者人数が定員に満たないことには驚かれるだろうが、その代わりに合格した暁には自分の興味の思うままに勉強する環境が待っているのだ。

3.東大推薦で評価されること

東大推薦がどのようなものなのか、少しイメージがついたと思う。

では、どんなことが評価されるのだろう。合格者が定員に満たないのはなぜなのだろう。

ここでは、筆者である私が受けた2019年度工学部入試を例に説明していく。

評価されることは以下の5つだ。

・志望理由書

・活動内容説明書

・小論文

・面接

・センター試験

志望理由書

推薦入試では必ずと言っていいほど書くものは志望理由書である。

800字にまとめて出願する時に一緒に郵送する。(出願の締め切りは11月の初旬)

活動内容説明書

高校在学中に行った特色ある活動を2件まで、その詳細を説明する書類である。

A3サイズの白紙に自由に書くことができる。

これも出願時に郵送する。

小論文

小論文も大学が提示したテーマについて書いて出願時に郵送する。

事前に書いて出せばよいので、しっかりとした小論文試験対策はあまり必要ないだろう。

ただ、事前に書く以上、高校の先生や塾の先生にしっかりと添削をしてもらう必要がある。

ちなみに大学が提示するテーマが平成31年度は過去3年に比べて少し雰囲気が違った。

例えば平成30年度工学部の小論文のテーマは以下のようであった。

発明や発見は人間の独創的な活動によってもたらされ、新しい価値を生み出し、社会に様々な影響を与えてきた。これまでの人類の歴史の中で、あなたが特に独創的であると感じた発明や発見を一つ取り上げ、なぜそう感じたか、説明しなさい。また、あなたにとって、真の独創性とはどのようなことか、述べなさい。(600~800字)

(引用元 東京大学 推薦入試トップページ)

平成29年度は三大発明と、三大発明に相当する未来の技術革新について、平成28年度は人類を豊かしたと思う技術について書くものだった。

対して平成31年度のテーマは以下のようであった。

私たちの食について考えよう。食は、美味しく、楽しく、健康的に、安く、早く、安全に、無駄なくなど、様々な価値基準から論じることができる。あなたが入学後に取り組みたい工学分野の研究や開発によって、どのように食の価値を向上させることができるか、独自の考えを具体的に記しなさい。(600~800字)

過去3年間は工学分野に関心がある者なら、ある程度下調べをしたら書けそうである。

だが、平成31年度においては、関心のある工学分野から「食」という観点で社会にアプローチするというテーマなので、下調べをすることはもちろん、受験生のオリジナリティーが重視された小論文であったと言えよう。

面接

12月の初旬に書類審査である第1次選考の通過発表がある。

次は12月中旬にある面接である。

ここでも、工学部を例に話を進めていく。

私の時は会場は本郷キャンパスで行われ、面接時間は実に40分間

私1人に対して、教員の方々が5人おられ、口頭またはホワイトボードを質疑応答を行った。

私が聞かれた事として、志望理由、高校で行っていた活動についての詳細、小論文についての質問、自分が関心のある分野での専門的な質問、物理の問題、自己アピール(日本語と英語)などがあった。

なかなか内容の濃い面接だ。

面接をするにあたって、大学の教授と40分間話せるように、提出した書類について聞かれるであろう質問を想定し、その答えを考えておいたり、また自分の興味のある分野について高校の授業よりも進んだ専門的な知識を身に着けたりする事が大切だ。

学校や塾の先生に面接の練習を綿密に積んでおこう!

センター試験

推薦入試はセンター試験によって学力を評価される。

ほとんどの学部では概ね8割の得点率が必要だ。(医学部医学科は780点以上)

一般入試では毎年、センター得点率のボーダーが9割(理科3類は9.4割程度)なので、センター試験の面では比較的ハードルは低くなる。

高校で何か特色のある活動をしており、東大を目指している受験生にとって推薦入試はチャレンジしやすい試験だろう。

4.まとめ

ざっと推薦入試について、特に東大推薦についてお分かり頂けただろうか。

東大推薦はおそらく他の大学よりも提出する書類が多く、面接の時間も長い。

筆者自身も二次対策が忙しい高3の10月から12月の間にこれだけの推薦に向けた準備をするのはとても大変だった。

ただ、つらいだけだったかというと、そうでもない。

制作する書類はすべて興味のある宇宙工学に関わるものであり、学校の先生にアドバイスをもらいながら準備する時は案外楽しかったし、自分の好きな事で受験できることがとても嬉しかった。

面接の時も、自分が高校の部活でやってきた模擬人工衛星(缶サット)の製作についてや書類だけでは字数的に書けなかった事についてたくさん話すことができた

東大推薦を通して、自分が勉強以外に頑張ってきた事を一旦整理することができたので、自分を客観的に見ることができ、良い経験だった。

合格が分かった時は、とても嬉しかった。

しかし、もし不合格だったとしても、忙しい時、時間を削って推薦対策をしたことに後悔はしなかったと思う。

これを読んでいる皆さんには気になっている大学の推薦入試を受けてみてほしい。

いや、そうではなく、推薦入試で語れる事がどんどん生まれてくるぐらい高校生の時に、いろんな経験をしてほしい。

東京大学推薦入試学生募集要項にはこうある。

「入学試験の得点だけを意識した,視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも,学校の授 業の内外で,自らの興味・関心を生かして幅広く学び,その過程で見出されるに違いない 諸問題を関連づける広い視野,あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い 洞察力を真剣に獲得しようとする人を東京大学は歓迎します。」

東大推薦を通して、「他人と違っていていい」というのが東大からのメッセージであると私は思っている。

皆さんにもそうあってほしいと思う。

この記事を読んでくれた方の中で、将来の東大推薦生がいることをささやかに願っている。

おすすめサイト

・キミの東大

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