リーディング(Reading)、ライティング(Writing)、リスニング(Listening)である。
英単語と並んでその全ての力に関わっているのが英文法である。
具体的にどういった点に関わってくるのか、考えてみてよう。
リーディングとライティングに英文法の力が必要なのは簡単に想像の付く。
英文法が身についていないと、長文は読めないし、いい加減な英作文しかできない。
だが、もしかしたらリスニングには関係ない、と思っている人もいるかもしれない。
しかし、文の形式がわからなければ、流れてくる英語が頭に入ってこないのである。
それに、長文読解やリスニングでも文法を問われていることが多い。
つまり、英文法の勉強は英語の勉強の要であるのだ。 英文法の勉強が不十分であれば、英語の成績は下がる。
逆に、十分に英文法の勉強をすれば、英語の成績は上がるのだ。
さて、英文法の勉強の必要性が分かったとなれば、当然効率的な勉強法を知りたくなるはずだ。
だが、ただ問題集を解くだけでは効率がいいとは言えない。
むしろ逆効果と言わざるを得ない。
では、効率的に勉強するにはどうしたらよいのか。 今回は、そう、英文法の効率的な勉強法について解説する。
是非この記事を読んで効率的にかつ着実に英文法の知識を身に着けてほしい。
文法問題集を解く前に
この章では、英文法の問題集を解く前に注意しなければならないポイントについて述べる。
問題集を解く以前にこのポイントを知らなければ効率は落ちる。
まずこの点をしっかりおさえておこう。
「答えを覚えるまで」は危険な勉強法
あなたは、どのように英文法を勉強しているだろうか。
- 英文法について詳しく理解していないまま、いきなり文法問題集を解いてはいないだろうか。
- 中学2年生~高校1年生で習う英文法が疎かではないだろうか。
- 文法用語を忘れてはいないだろうか。
この中の1つでも当てはまった人は危険だ。
文法を固めようとして、答えを覚えるまで文法問題集を繰り返し解く、という勉強法はよくない。
しかし、未だにこのような勉強法を推奨する本や教師も少なくない。
あなたの身近にもきっといることだろう。
はっきりと言うが、英語が苦手な人はこのような方法ではまずうまくいかない。
「なぜその答えになるのか」を理解しなければ、答えを丸暗記していることに変わりはない。
うまくいかない一例を、仮定法を例にとって示そう。
問題集では、「仮定法」の単元に仮定法に関する問題が揃っている。
そこには、条件節のない仮定法の問題もある。 あなたは、問題集を繰り返し解き、答えを覚えるまでになった。
「仮定法は完璧!」と思うかもしれない。 しかし、実際はどうだろう。
長文やリスニングの最中にわざわざ「ここは仮定法ですよ」などと教えてはくれない。
If文やBut for、Withoutなど条件が明示されているなら何とかなりそうだが、条件が隠れていたらどうだろう。
条件は自分で探し出して訳に反映させないと正しい理解はできない。
上では仮定法を取り上げたが、あなたの場合はどうだろうか。
仮定法に限らず、このような経験をしたことはないだろうか。
このように、英文法の基礎をしっかり理解できていないと、問題集を解いてもただ答えを覚える作業となってしまい、違う問題が出題されたときに分からなくなってしまう。
超重要!英文法の基礎
英文法の基礎は「構造把握」と「和訳」に必要な要素である。 「構造把握」と「和訳」は英文解釈の知識だ。
英文解釈とは、簡単に言うと和訳することである。
もう少し正確に言うと、英文の構造を理解した上で和訳することだ。
英文を和訳するためには英単語と英熟語がわかっているのは最低条件だが、単熟語を知っているだけでは訳せない英文は多く存在する。
例えばこんな文。
The girl called Cathy called Tom. 使っている単語は中学生レベルだが、訳せない高校生がほとんどだろう。
実はこの文は、中学生の時に習った英文法の知識で読めるはずである。
「過去分詞が形容詞になることがある」と言えばわかるだろうか。わからない場合は英文法の講義本を読んだりしてみよう。
正解は「キャシーと呼ばれている女の子とがトムに電話した。」である。
過去分詞の形容詞用法については習ったはずなのに…という人は、英文法の知識を読解に生かせていない証拠である。
英文解釈とは、英文法を読解に生かすことでもあるのだ。
ここで英文解釈についてまとめてみよう。 英文解釈とは、(英文法の知識を駆使して)英文構造を正しく理解して、日本語訳を作ること。
さて、あなたは上記の文章をきちんと和訳できただろうか。
英文法の基礎が出来ないと構造把握や和訳すらまともに出来ない。
なぜここで英文解釈の話題を出したかというと、実は文法問題にはこの英文解釈の力が重要なのだ。
英文解釈ができない状態で文法問題を解いても意味はない。
したがって、英文法の勉強では、まずは英文法の基礎を固めないといけない。
ポイント1:まずは「英文読解のための英文法」を学ぶ
長くなってしまったが、結局、英文法の基礎とはなにか?
それは、「英文読解のための英文法」である。 英文読解のための英文法、ここでは読解英文法と呼ぶが、具体的な内容は中学~高校1・2年で習う英文法だ。
特に重要な事項は以下の通りである。
- 5文型
- 準動詞(不定詞・動名詞・分詞)
- 接続詞(名詞節・副詞節)
- 関係詞
これらは英文の構造把握に直結する。
あなたはこれらをしっかり理解しているだろうか。
また、これらの文法事項、例文を見てそれぞれ自分で解説できるだろうか。
- 「目的語Oはどの品詞がなるか? 補語Cは?」
- 「不定詞とは? どの品詞になれるか?」
- 「動名詞とは? どの品詞になれるか?」
- 「分詞とは? どの品詞になれるか? 分詞構文とは?」
- 「関係詞の先行詞、主格、目的格、前置詞+関係詞を説明できるか?」
例えば、動名詞なら、「動名詞はV+ingの形をして、文中では名詞として扱われる。
また本来の動詞の機能もそのまま持っているので、後ろに目的語、補語、副詞を伴うことができる。」
という具合に、だ。 これらの事項は最低限この程度まで説明できないとダメだ。
ポイント2:文法用語をしっかり覚える
学校の授業や、教科書・参考書を読むにあたって、必ず出てくるのが文法用語だ。 文法用語とは、つまるところ専門用語であるから、それをわかっていないと理解が追い付かなくなってしまう。
具体例をいくつか挙げると、
- 句と節の違い
- 名詞・動詞・形容詞・副詞の働き
- 形容詞と副詞の違い
- 完全な文と不完全な文の違い
- 意味上の主語
- 等位接続詞と従属接続詞
などがあるが、実はこれらも構造把握に関わる部分なので完璧に説明できるようにしておくことが重要である。
例えば、句と節の違いについて、「句と節はどちらも単語二つ以上のカタマリだが、句はSVを含まず、節はSVを含む。」
と、きちんと説明できるだろうか。
文法用語は理解度の向上だけでなく次章で説明するポイントにも関わるので、是非とも覚えてほしい。
問題集を用いた勉強法
前章で説明したように、英文法の学習法として最初の段階で大切なことは、基礎的な英文法を理解するということだ。
ポイント1、2をおさえていれば、英文の構文把握もできるようになるし、和訳もできるようになる。
この段階になったら、いよいよ問題集を解く。 そして、ここにもおさえておきたいポイントが存在する。
ここでは、問題集を用いた勉強法について解説する。 問題集をいかに効率的に解き、いかに使いこなせるか。
まずは問題集を解くところから始めよう。
さて、問題集を開いたあなたは、どのように問題を解くのだろうか。
いろいろなやり方があると思うが、効率的に解くにはいくつか制限をを設ける必要がある。
ここには大きく2つのポイントがある。
ポイント3:常に入試本番を意識しよう
まず、外的な制限であるが、入試本番と同じような状況をつくるとよい。 具体的には、
- 制限時間を決める
- 参考書などは片付ける
の2つ。 1つ目に関していうと、入試本番には時間制限が存在するというのが1つの理由だが、それだけではない。
文法問題はいくら時間をかけても解けないものは解けない。 また、時間をかけてしまうとかえって曖昧な記憶が邪魔して選択肢に悩んでしまう、という経験をしたこともあるはずだ。
時間をかけてもかけなくても、曖昧な部分はきちんと復習するのだから、時間を決めたほうが効率的だ。
2つ目に関して、参考書などを片付けるのは、一部の例外を除いて、入試本番では参考書や辞書を持ち込めないからだ。
参考書を開きながら解いている人は、今すぐ参考書を閉じて視界に入らない場所に片付けよう。
ポイント4:人に説明するつもりで解こう
次に、内的な制限、演習中に意識することに関してだが、例えば次の問題をみてほしい。
2014年度センター試験英語 第2問A 次の問いの( )に入れるのに最も適当なものを、それぞれ下の①~④のうちから一つ選べ。
問1.When I looked out of the window last night, I saw a cat ( ) into my neighbor’s yard.
① is sneaked
② sneaking
③ sneaks
④ to sneak
もちろん、答えは②だが、答えの選択肢を選ぶだけでは全く意味がない。
これでは、「この問題を解ける」という状態でしかない。 きちんとその根拠を示して答えを導くことが大切なのだ。
「I saw a cat~の部分がSVOの文型になっているし、sawが知覚動詞となっているので、()の中に動詞が入ることはない。
ということは①と③はあり得ない。また、sawにSVOOの文型はないので不定詞はあり得ない。
よって答えは➁の動名詞である。」
という具合に、他人に「どうしてその答えになったのか」と尋ねられても教えられるように意識しよう。
教えることによって、自分の理解の不十分な点と理解できている点を明確にすることができる。
自分の思考回路をアウトプットしているで力がつかないわけがない。
余談だが、上の根拠の説明にはポイント1,2で触れた英文法の基礎と文法用語を使っているのがわかると思う。
前半の従属節は構造把握によって説明から省かれているし、文型や知覚動詞、不定詞、動名詞を理解していないと上の説明はできない。
改めて英文法の基礎の重要性がわかったはずだ。
次に説明するのは、復習の仕方である。 肝心なのは問題を解き終えてからだ。
丸付けは、理解していることと理解していないことの区別であり、復習は正しい知識の再インプットである。
ここでも効率を上げるためのポイントがある。
ポイント5:理解していないところを明確にしよう
答え合わせをしたら、次の点を確認しよう。
- 答えと根拠がともに合っていたいだろうか。
- 答えや根拠が間違っていたり、根拠が曖昧で不十分ではなかったか、そもそも全く分からなかったか。
問題集を解く目的は、得点をとることではなく自分がきちんと理解しているかを確認するためであるから、少しでも怪しいと思ったらチェックをしよう。
ポイント6:分からなかった問題の知識を確認しよう
先ほどの分類に従って、復習を始よう。
1つ目の分類に入った問題でも、解説に出てくる知識を網羅しよう。
そこには問題に関連した新しい知識が書かれていることがある。 是非ともおさえておこう。
2つ目の分類に入った問題は、力を入れて復習する。
解説を読んでどこが間違っていたか、どこが曖昧だったかを確認し、自分が使う参考書の該当する部分にチェックを入れる。
そして、正しい知識を再インプットし、次の演習で正しくアウトプットできるか確認しよう。
ポイント7:思考回路を高速化させよう
「答えを覚えるまで繰り返す手法」はよくないと言ったが、「繰り返して思考回路を速くする」ことは必要だ。
言い換えると、ポイント4の例で説明したような「論理的思考を速くする」ということだ。
徐々に1問当たりの時間を短くしつつ、正しい知識のインプットとアウトプットを繰り返すことで、思考回路を体に覚えさせよう。
途中で思考回路が詰まったり、スピードダウンしたりすれば、知識の定着が足りていないということだ。
その部分は何度も復習を繰り返そう。
ポイント8:必要なら、中学まで戻って復習しよう
演習を繰り返すうちに、何度も間違えていたり、理解ができていない分野が明確になってくる。
そのようなときは、基礎知識の欠落を疑うべきだ。
特に多いのが、時制などの基本的な分野のケアレスミスだ。
これらは全ての分野でおこることであるから、要注意してみてほしい。
基礎ができていないまま参考書の解説を読んでも頭に入ってこない。
中学生レベルの英文法まで戻ってじっくり復習しよう。
以上が6つのポイントが問題集を解くときに注意するポイントである。
最後に、英文を音声で聞いて音読できるようにする練習について紹介しよう。
問題演習は机の上でしかできないが、リスニングならスキマ時間でどこでもできるのでおススメだ。
ポイント9:音声を聞いてシャドウイング
シャドウイングには、リスニング、英文読解力、さらには「正しい英文に慣れる」効果がある。
これによって、「この選択肢は不自然だ」とフィーリングでも問題が解けるようになる。
どうしても答えを選べないときに、「こんな形は見たことないな・この選択肢だと不自然だな」という感覚も重要だ。
おそらくネイティブは日本人のように理論立てて正解を選ばないだろう。
英文を何度も音読して「正しい英文に慣れる」ことも文法問題には重要だ。
英語慣れしている人が、特に英文法の勉強をしなくても問題が解けることも、慣れていることに原因がある。
一度勉強した英文は、文法の知識を丸ごと体に刻み付けるようなイメージで音読練習をすると良い。
これも英語を自分の体に染みつかせるための特訓だ。 是非このようなことを意識してトレーニングしていってほしい。
まとめ
以上が英文法の勉強でおさえておきたいポイントである。
英文法は最初に述べた通り、長文やリスニングなど他の分野にも関わってくる。
しっかり英文法の知識をおさえれば、おのずと英語全体の成績が上がる。
今まで述べたことを踏まえた勉強法なら、効率が格段に上がるはずだ。
なお、英文法の参考書については、別記事で詳細に触れている。
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