丸暗記は間違い!?本質から覚える数学公式の効率的な覚え方
2016年12月28日 | 数学
高校数学で覚えなければならない公式はさほど多くない。
だが、いかんせん数式なので、数学が苦手な人にとっては覚えにくいものである。
公式を覚えていないと苦労する場面は多い。 三角関数の加法定理をゼロから計算するのは大変。部分積分も、簡単に思いつくものではない。
何でもかんでも暗記するのは考えものだが、可能な範囲で省エネするのは大学受験で欠かせない。
今回は、数学の公式の覚え方について説明する。
数式の羅列だから覚えるのが大変…と思うかもしれないが、実は工夫の余地がたくさんある。
これから述べることをすぐに実践に移して、公式をサクッと覚えてしまおう。
そうすれば数学の問題は今までよりずっと解きやすくなる。
公式をなぜ覚えられないか
公式を覚えるのが苦手な人は少なからずいる。 まずは、そういう人たちがどうして覚えられないかを探求してみる。
公式だけを見て覚えようとしている
比較対象として、歴史上の人物名を覚えることを考えよう。
この場合、受験生は教科書や参考書を読んで頭に入れることになる。
人物名というのは考えて出てくる類のものではないので、とにかく正確に、確実に暗記する必要があるのだ。
数学の公式はどうだろうか。 同じように、公式だけを眺めて暗記するしかないのだろうか。
答えはNOだ。 なぜなら、数学の公式は実際に「使う」ことができるためである。
単に公式をひたすら見て暗記するのではなく、教科書や参考書の例題を解く過程で実際に用いることになる。
のちに詳しく述べるが、数学の公式を暗記するうえでそれを使ってみるのは大変重要なことだ。
逆にいうと、あたかも英単語を覚える可能ように暗記カードに公式のみを書いてせっせと暗記しようとしても、大抵の場合失敗に終わる。
このように、数学の公式は実用とともに暗記することができ、それをしないとどうしても頭に入らないのである。
この点において、地歴公民の知識のようにとにかく頭に入れたもん勝ち、というわけではないので注意しよう。
今までそういう覚え方をしてきた人は、覚えにくさに苛立ちを覚えてきたにちがいない
意味を考えない
もう一つ、公式の暗記が下手な受験生が陥っている問題として「公式の意味を考えない」ということがある。
つまり、公式を意味のある式ではなく単なる文字列だと思っているのだ。 そのような覚え方をすると、数学公式の暗記は突如大変になる。
例として、余弦定理の公式を覚えるとしよう。
余弦定理は高1で学習する、次のような公式であった。
意味を考えないと、こんなベーシックな公式を暗記するのも一苦労である。
たとえば、2abの前についている符号がプラスなのかマイナスなのかと迷ってしまうのだ。
完全に暗記している人なら問題ないかもしれないが、その他加法定理や和積の公式など、符号で悩む公式はたくさん存在する。
それらをいちいち丸暗記するのは大きな負担だし、覚え間違いのリスクもある。
余弦定理の式の意味は、後で詳しく見ていく。 このように、公式の意味を理解しないと暗記するのが大変になる。
意味がわからないと単なる文字列に等しいので当然のことだ。
公式同士の繋がりを考えない
もう一つ陥りやすい問題は、公式1つ1つが独立したものだと思い込んでしまうことだ。
再び歴史上の人物名を比較対象としてみる。
伊藤という人物と大隈という人物の名前を覚える時に、これら2つの名前に関係はあるだろうか。
いうまでもなく、名前そのものに関係性はない。
もちろん登場人物としての関わりはあるだろうが、人物名や地名そのものに関係性があることは稀である。
しかし数学の公式は事情が異なる。 一見独立しているように見える公式も、実は深く関わっていることが多いのだ。
ある公式の特別な場合がまた別の公式であるケースもある。
あるいはある公式を変形するとまた別の公式が生まれることもある。 このように、数学公式は独立した知識ではない。
後に例とともに見ていくが、一つ一つ単独で覚えようとするのは簡単な話ではない。
公式暗記に困っている受験生には、各々の公式の関係性を理解できていない人が多いのだ。
ここまでのまとめ
公式暗記が苦手な人が抱える問題を述べてきた。 ここまでの内容をまとめると、公式を暗記するには
- 実際に例題で公式を使ってみる
- 公式の意味を考える
- 公式同士の繋がりを考える
という3点が肝要であると言える。 これらを意識して、公式の覚え方を考え直すべきである。
公式を使う
ここまではやや抽象的な議論にとどまっていたため、具体例とともにこれら3点を実践してみよう。
先ほども登場した余弦定理を例に、着実な公式の覚え方を体験するのだ。
実際に公式を使い、意味を考え、公式同士の関係もみる。 どれも欠かせないので忘れないように。 まずは公式の使い方を見ていく。
余弦定理を例に
余弦定理の式を再掲する。
すでに暗記している人にとっては常識だろうが、何も知らない人がこの公式を覚えるという状況を想定する。
つまり、高1の頃の自分に戻って、もう一回暗記するのだ。
数学の力が不十分な段階では、公式を見ただけで意味を理解するのは難しい。
そこで、実際にこの公式を使って問題を解いてみることにする。 次のような簡単な問いを考える。
<例題> AB=5,AC=8,∠BAC=60°のときBCを求めよ。
ただ公式を使うだけの問題だ。 公式を一度用いるだけで簡単に解にたどり着ける。
<解法> 余弦定理より、
また、次のような問題を考えることもできる。
<例題> AB=5,BC=7,CA=8のとき、∠BACを求めよ。
辺の長さを余弦定理に代入することでcosの値がわかり、そこから角度がもとまる、という理屈だ。
これらは最も単純な問題だが、こうした問題演習を繰り返すことで余弦定理の意味がわかってくる。
式を眺めているだけでは、公式を覚えるのに苦労する。 やはり最善の方法は、自分でそれを使って答えを出してみることに尽きる。
公式を使う練習
では、具体的な勉強法について説明しよう。 公式の使い方を学ぶうえで重要なのは、教科書の例題・練習問題を中心に解くということである。
数学の勉強をする時に、いきなり高いレベルの問題に挑戦する人がいるが、それは誤った判断である。
最初の段階で要求されるのは、複雑な問題を解く力ではない。 公式を実際に何度も使って答えを出し、そして慣れていくということである。
それにより公式を自然と覚えられるし、適切な場面で用いることができるようになる。
上で挙げたような式1,2本で終了する問題で構わない。 複雑な問題を解くのは無意味ではない。
だが、公式を使う以外の苦労が多すぎると、自分が何のために問題を解いているのか見失ってしまうのだ。
単純な問題であれば「自分はいま公式を定着させるために勉強している」ということを忘れずにいられるので、ちゃんと成果を上げられる。
平易な問題ばかりを解くのは退屈かもしれないが、初めのうちはどうしても必要な作業だ。 グッと我慢して、基礎の定着に努めよう。
公式の意味を考える
次に、公式の「意味」を考えてみよう。 同じく余弦定理を例に、これは何のための公式なのかを見ていく。
再び余弦定理
1つ目の問題の場合、2つの長さとその間の角度が与えられており、求めたのはもう1つの辺の長さであった。
つまり余弦定理の公式は、「長さを求める」のに使える公式であると言える。
しかしそれだけではなく、余弦定理には別の使い方がある。
2つ目の例題の場合、辺の長さは3つとも判明しており、求めたのは角度であった。
このとき余弦定理は「角度を求める公式」という意味づけができる。
2つの例題から見えてきただろうが、公式は「意味づけ」をすることで覚えやすくなる。 しかも、その意味は1つに限定されないのだ。
余弦定理は長さを求める公式とも言えるし角度を求める公式とも言える。
端的に言えば、三角形の辺と角度の関係を示す公式なのだ。 そう考えると、
- 辺とその間の角から別の辺の長さを求める問題
- 辺の長さから角度を求める問題
などでは余弦定理が活躍するのではないか、という感覚が身についてくる。
そうすれば、問題を見た時に適切な解法をすぐに発見できるのだ。
これは、公式をただの文字列だと思っている限り決して得られない力だ。
最初のうちは、自分なりの勝手な意味づけで構わないので、公式の意味を抽象的に把握しておこう。
仮に認識が間違っていたとしても、日頃の演習や定期試験のたびにその認識を改めていけばよい。
とにかく、自分なりの理論を構築してそれに則って問題を解くというのが理系科目では重要なのだ。 公式の意味を理解することのもう一つの価値を述べておこう。
試験で余弦定理を使う時に、符号を1箇所忘れてしまったとする。
公式の符号を忘れるというのは、初期の頃は頻繁にあることだし、何かの拍子に記憶が抜ける可能性は十分に考えられる。
こういう時、あなたはどうするだろうか。 一か八かでどちらかを使ってみるというのはあまりに危険な話だ。
公式の意味を理解していれば、2つのうちどちらが正しいか一瞬で判別できる。
答えはもちろん1つ目(マイナスの方)である。
もし符号がプラスだったら、cosが大きい時(つまり角度が小さい時)にcの長さが大きくなってしまう。
しかし、実際はそんなことは起こり得ない。 角が小さい方が三角形は細長くなり、対辺は短くなるに決まっている。
そう考えれば、プラスの方は誤った公式であることがわかるだろう。
公式の意味を分かっていればこういう迷いが生じた時に瞬時に修正できるのだ。 以上より、公式の意味を覚えるのは以下のような価値がある。
- 問題を見た時に適切な解法をすぐに見つけることができる。
- 公式を間違った形で使うリスクをゼロにできる。
したがって、意味を理解しておくのは欠かせないのだ。
実際の試験でも、公式の意味を理解しておくだけで公式の使いやすさが抜群に向上する。
公式の意味を知るには
ついで、公式の意味を把握する練習方法を見ていく。
日頃数学の問題を解く時は、解答に至る過程と答えを記してそれで終わり、という人が大多数である。
それ自体は良いことなのだが、意味を理解するには少々不十分だ。
ここで紹介するのはとても重要な技術なのでよく読んでほしい。 各々の問題で、何から何を求めたのかを整理してメモするのだ。
たとえば上の余弦定理の例題で言えば、「2つの長さとその間の角度→もう1つの長さ」というふうにノートにメモしておく。
地味で面倒な作業だが、こうして公式を抽象化してまとめておくのが公式の理解に大いに役立つ。
初めのうちは作業の価値が見えにくいに違いない。 しかし、これの積み重ねにより、実際の試験の場で解法をスムーズに発見できる。
闇雲に公式を使うだけでも正解できることは多々ある。 全く無意味とまでは言えないが、目的を明確にして公式を使った方が効率がよいのは明らかである。
問題を解くたびに、その公式がどう役立ったのかを記録しておく。
こうすることで、のちの復習の際に「ああ、この公式はこういう目的があるのか」と理解できる。
公式同士の繋がりを考える
先ほども少し述べたが、高校数学の公式には関連したものが多数存在する。 具体例を挙げつつ説明し、公式を効率的に・体系的に身につける術を見ていこう。
関連している公式の例
またしても余弦定理に登場してもらおう。 この公式の特殊な場合を考えてみよう。
三角形の角度の一つが直角であった場合を見てみる。 直角の場合、cosの値は0となるため、右辺の最後の項は消えて次の形になる。
この公式は、高校生であれば1度は見たことがあるはずだ。 そう、三平方の定理である。
いまどういう作業をしたのか考えてみよう。 余弦定理は、三角形であればθがどういう角度であっても成立する式だ。
その式で、特にθが直角の場合を考えたのであり、そこから三平方の定理が出てきた。
つまり、三平方の定理は余弦定理の特別な場合であることがいえる。
したがって、仮に三平方の定理を忘れてしまったとしても、余弦定理から導いてやることが容易に可能だ。
あるいは逆に、余弦定理の形を忘れてしまっても、三平方の定理からある程度は予測可能なのである。
このように、関連している公式を発見することで、一方を忘れてしまっても他方から思い出すことができるし、包含関係にあるならば範囲の広い方を覚えておけば他は覚える必要がなくなるのである。
いちいちすべての公式を覚えるというのは受験生にとって小さくない負担だし、できれば覚える数は少なくして効率化を図りたいところ。
したがって公式間の関係に注意するのは大きな意味がある。 もう1つ例を挙げておく。三角関数の分野では
- 加法定理
- 2倍角の公式
- 半角の公式
- 和積の公式
- 積和の公式
- 三角関数の合成
など目が眩む量の公式が存在する。
どれも複雑な形をしており、覚えるのに必死な受験生を数多く見かける。
しかし、この中でまともに暗記すべきなのは1つしかない。
それは「加法定理」である。 加法定理さえ覚えておけば、他の公式たちはすべて導き出すことが可能だ。
良い経験になるので、時間がある人は導出してみよう。 でも、覚えた方が楽でしょ?と思う人がいるはずだ。
もちろん、完璧に覚えられるならばその方が楽なのは間違いない。
しかし、たとえば和積・積和の公式のように複雑なものを完璧に覚えておくのは大変だ。
覚えてしばらくすると記憶があやふやとなり、符号を間違えたりsinとcosを間違えたり、いろいろな弊害が生じる。
暗記で済ませるというのは、正確に暗記することが前提となっている。
それだったら、覚えるものを最低限にしてあとはその場で作り出してしまった方が賢いし安全である。
効率的に公式を覚えるには
公式同士の繋がりを理解するにはどのような勉強をすればよいだろうか。
効果的なのは、ある公式から別の公式を導いてみることである。
上の例で言えば、加法定理から2倍角の公式や和積の公式などを実際に導いてみるのだ。
自分の手で計算しておけば、試験でも同様に公式を導出できる。
勉強が進むにつれて、覚えなければならない公式は実は案外少ないことがわかってくる。
今まで真面目にすべての公式を覚えようとしてきたのがバカバカしく思えてくる。
そう感じることができたら、公式を導出する能力が身についた証拠だ。
実際、複雑な公式をせっせと覚えるよりもずっと楽だし、上で述べた覚え間違いのリスクもない。
また、ノートを用意して教科書に登場する公式を並べてみよう。
それを眺めて、公式間の関係を掴むのだ。 違う学年の内容が密接に関係していることもある。
先ほど挙げた余弦定理と三平方の定理が代表例である。
日頃の学習では、闇雲に公式を覚えて使っていくのではなく、まず公式どうしの関係を抽象的に整理し、最低限覚えなければならないものは何なのかを明確にしてから本格的な問題演習に入った方が効率的である。
まとめ
数学公式の暗記方法について、
- 公式を使ってみる
- 公式の意味を考える
- 公式同士の関係を捉える
という3つの観点から説明していた。
数学の公式にはちゃんと意味がある。 公式を用いていく中で、次第にその公式の意味がわかってくる。
そうすれば、知らないうちに公式は暗記できるものなのだ。 英単語や歴史上の人物のように、暗記カードに公式を書いて丸覚えする、という手法は数学では意味がないし、何より効率も悪い。
正しい方法で努力を重ねれば、公式はすぐに覚えられる。
数はさほど多くないので、すぐに結果に結びつくことも期待できる。
公式の暗記が捗らない受験生がいたら、今回述べたことをすぐに実践してほしい。
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