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これからの大学入試に必要な数学の「思考力」を鍛える問題集の使い方

2022年05月25日 | 数学

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今回の記事では、河合塾の『これからの大学入試に必要な数学の「思考力」を鍛える問題集』を紹介する。        

基本情報        

まずは、この問題集の基本情報を確認しよう。

どのような問題集なのか、ざっくりと把握してほしい。

  •         ジャンル…数学の問題集
  •         目的…数学の解き方の方針を学ぶ
  •         対象者…入試(共通テストを含む)で数学を使う人
  •         使用時期…数学の基礎固めが完了し、共通テストのマーク演習で安定して8割程度取れるようになってから
  •         問題数…70問程度
  •         おすすめ度…★★★☆☆

特徴        

次に、この問題集の特筆すべき点を挙げる。

今の自分に合った参考書であるか、しっかりと見極め、活用するかどうか判断する材料にしてほしい。

解く際の思考法を学ぶ

通常の問題集と比較してこの教材の特徴的な点は、汎用的な数学の思考力アップが図れるところだ。

通常の問題集のように、様々な単元の問題を学習するという形式ではない。数学の問題をどのような視点で考え、いかにして解法の糸口が見つけていくかというスキル、すなわち汎用的な数学の思考力を上げる教材である。

思考力を試す問題は、近年の入試で増加の傾向にある。

共通テストや一般入試では、これまでのように、最低限の知識や解法を丸覚えしてしまえば解くことができるという問題は減ってきている。その代わりに、数学的な思考力を生かして解くような問題が増えてきているのだ。今後、さらにこの傾向は強まることが予想される。

この問題集は、現代の入試の特質に適応するためにぴったりな問題集だ。

 基礎〜応用レベル

この問題集は、基礎レベルから応用レベルまで、幅広い難易度の問題が集められている。

問題数がそこまで多くない割には、難易度の幅が広いことが特徴だ。

もう少し詳しく、この問題集の内容を説明しよう。

この問題集は、5章に分かれており、1章と3~5章には、合わせて70問程度の問題が収録されている。

1章の問題は、難易度的には基礎レベルで、教科書の内容が分かっていれば解くことができるだろう。

しかし、3~5章の問題は難しいものばかりだ。

3章から順に難易度は上がっていく。5章では、東大・京大などの最難関大学の入試に対応できるような問題も出てくる。問題を解いて、解説を読むことで、数学の思考力を鍛えられるような問題が数多く載っている。

思考力を鍛える問題集ということもあり、しっかりと数学の基礎が出来上がっていないと取り掛かるのは難しいだろう。

ちなみに、2章には、数学の問題を解く上でのポイントが載っている。数学の問題に取り掛かるときにどういう思考法で解けば良いのか、どうすれば解法のプロセスを組み立てられるのかが理解できるようになっている。

見やすいレイアウト

構成や配色が目に優しく、見やすいこともこの問題集の特徴だ。

配色は、黒と赤の2色刷りとなっている。黒だけの場合と比べて格段に見やすい。

解答は別冊となっており、問題集の冊子に挿入されている。解答も問題集と同様、黒と赤の2色刷りになっているところが嬉しいポイントだ。

また、1つの問題に対してページが贅沢に使ってあり、空白の多いレイアウトになっている。空白が少なく、文字の密度が高い問題集は、一見情報量が多いようだが、見づらく重要なポイントが分かりづらいという欠点がある。

入試対策という長期戦を乗り越えるためには、レイアウトの見やすさも問題集を選ぶ上での大事なポイントだ。

空白の多いレイアウトであるが、内容が薄いわけではない。一般的な教材よりも詳しく解説されている。解き方のアプローチ方法や、重要なポイントなどのプラスアルファの情報についても説明が詳しく載っているので、安心だ。

使い方        

『これからの大学入試に必要な数学の「思考力」を鍛える問題集』がどのような問題集であるか、理解できただろうか。

次に、この問題集を実際にどのように活用していけば良いのかを解説する。

問題を自力で解く

数学でやってはならない勉強法は、すぐに答えを見て解き方を丸覚えしてしまうことだ。

今後の共通テストや一般入試では、思考力がないと解けない問題がどんどん増えてくる。思考力が試される問題は、丸覚えだけでは対応できない。

もちろん、インプットすることが常に悪いわけではない。問題ごとのポイントや解き方の糸口を記憶に定着させるときなど、インプットをするべきタイミングはある。

しかし、問題を解く上で一番重要な能力は、答えまでのプロセスを自分で作り上げる力である。

その能力を鍛える上で最も重要なことは、問題を自力で解くことである。

なぜ、問題を自力で解くことが大事なのか。

それは、自力を解くことでアウトプット力が鍛えられるからだ。

この過程を省いてしまうと、アウトプット力を鍛えられない。定期テストでは点が取れるのに、模試や入試の問題では点が取れないという事態に陥るのは、丸覚えのインプットしかできていない人だ。

よって、アウトプット力が身についているかどうかによって、数学の試験の点数は大きく差が開くことになる。

繰り返すが、とにかく最初に自力で問題を解くことが重要だ。

自力で問題を解くときには多大な労力が必要だ。1問解くだけでもたくさんの時間が掛かってしまうだろう。

それでも自力で解こうとして頭を使っている時間は、アウトプット力を鍛える最高の時間だ。

問題集を解き進めていく中で、難しくて分からない問題も出てくるだろう。 

その場合も、最低でも10分は答えを見ずに考えてみてほしい。

分からない問題でも思考停止になってはいけない。色々な方法を試したり、問題となっている要素を1つ1つ分けて、分かっている部分だけでも明確にしていくなど、できることはある。

自力で解こうと頭を使って頑張ることで、少しずつ前進することができる。

解説で思考法を理解する

問題を解き終わったら、次は丸つけだ。

丸つけは、単に解答が合っているかを確認するだけで終わってはいけない。

その解説を腑に落ちるまでしっかり読むことが重要だ。

数学の演習では、答えが合っているかどうかではなく、答えにたどり着くまでのプロセスが正しいかどうかを毎回検証するように答え合わせをするが鉄則である。

正答した問題も、途中のプロセスを確認して、よりスマートに解く方法や、解法のポイントを学ぶことで、次に生かすことができる。

自力で解けなかった問題は、解法を確認し、類題にも対応できるように、答えにたどり着くまでのアプローチの組み立て方を理解する。

丸つけの段階で、重要なポイントはインプットすればよい。

特にこの問題集は、問題に対するアプローチ、すなわち数学の思考法を鍛えるための問題集であるため、インプットすべきポイントが詰まっている。

他の参考書より入念に解説を読み込むことが必要だ。

類題で実践する

1章より3章、3章より4章と、章が上がるごとに難しい問題になる。

この問題集の中で学習したアプローチや方法を次の問題に生かしながら解いていくようにすると効果的だ。既に学習した内容をどんどん活用していくことで難しい問題にも対応できるようになるだろう。

自分が学習したことが実践でどのように役立つのか、理解しながら体に染み付いてくるはずだ。

何度も繰り返すことで、この問題集で解説されている思考法が実践で活用できるようになるだろう。

反復演習

1度解いた問題も何度も解き直すことが重要だ。

初見で解けた問題は除いて、解けなかった問題は、解説を読み込んで理解した後、すぐに手を使って解き直すようにしてほしい。

さらに、1日の学習が終わったときに再度解き直す。

初見で解けなかった問題は、最低2回は手を使って解くという反復演習が必要だ。

次の日からは手を使って解き直す時間を確保するのは難しいだろう。

問題のポイントを意識しながら「この問題にはこういうアプローチで解こう」ということを頭の中で想起するだけで十分である。

反復演習によって、数学の色々な問題が秒でアウトプットできるようになる。

そのレベルにまで到達するよう反復演習に取り組んでほしい。

注意点        

問題の難易度にばらつきがある

この問題集を活用する上での注意点も参考にしてほしい。

気を付けてほしいのは、問題数が少ない割には、問題のレベルが幅広いことだ。

基本的なレベルから東大・京大レベルまでの問題が収録されており、難易度の差が大きい。

1つ前の問題は簡単だったのに、その次の問題はとても難しいということもある。

そういう特徴のある問題集であることを理解しておくと良い。

問題に対する思考力を鍛えるのが目的の問題集だ。

そのことを意識して、1度学んだアプローチ方法は常に実践していくという学習方法で解き進めていってほしい。

類書との比較        

次に、この問題集と似た参考書を2冊紹介する。

どちらも数学のすべての問題に対して使えるような参考書で、数学の思考法に焦点を当てた教材だ。

東京出版 大学への数学 解法の突破口

東京出版の「大学への数学」シリーズは、基本的にはどの問題集もレベルが高い。

白黒のレイアウトで、解説の詳しさも標準であるため、数学が苦手な人には取り組みにくいシリーズになるだろう。

ある程度数学ができる人にとっては、数学の本質的な知識が解説されており、問題数も多いため、レベルアップできる教材だ。

「大学への数学」シリーズの中でも「解法の突破口」は、数学の問題に対して汎用的に使える問題へのアプローチや思考法、解法のプロセスを組み立てる方法に焦点を当てた参考書だ。

この問題集は、大学の基礎レベルの問題が解けるようなレベルに達してから使うような、難易度の高い参考書であるため、覚悟して取り組んでほしい。

東京書籍 NEW ACTION LEGEND

「NEW ACTION LEGEND」はこれまで紹介した参考書とは形式がガラッと変わり、いわゆる網羅系参考書となっている。

非常に厚い参考書だ。

それぞれの単元について体系的に整理されており、公式や要点がまとめてある。その後、なぜそうなるのかを解説し、例題、類題、章末問題が続く。

網羅系の参考書は、基礎から東大・京大などの最難関大学の対策まで、これ1冊あればどの大学にも対応できるというような参考書だ。受験対策にはこのような網羅系参考書があれば事足りる。

「NEW ACTION LEGEND」は、数ある網羅系参考書の中でも非常に良質なものだ。

数学的な思考法や、問題に対する基本的なアプローチが解説されているところが素晴らしい。

また、最初の3ページで、問題を解くときの見方やアプローチの方法について、重要なポイントが15項目くらいにぎゅっと詰まって書かれている。その3ページだけでもこの参考書を購入した意味があるというほどの充実の内容だ。

1つ1つの問題について、どういうアプローチをしていくのかという頭の中の思考が視覚化されているのだ。賢い人たちがどのように問題を解いているのかが、目で見て分かるように書かれている。

視覚的にプロセスを学ぶことができるのが、他の網羅系参考書とは違うところだ。

以上、2冊を紹介したが、どちらも解法や汎用的に使える数学の問題へのアプローチに焦点を当てた参考書である。

比較して良いものを自分なりに選んでほしい。

まとめ        

これからの大学入試に必要な数学の「思考力」を鍛える問題集』は、数学の問題に対して汎用的に使えるスキルを学ぶための参考書だ。

ある程度問題は解けるが、初見の問題や類題に対応できない人におすすめする。

問題が解けないというときには、そもそも最初のアプローチが合っていない場合がある。

しかし、最初のアプローチの方法は、なかなか学校の授業では教えてくれない。

この参考書を使って、初見の問題も解けるよう、汎用的に対応するスキルを学んでいってほしい。

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