例題と演習題の2ステップで鍛える「一対一対応の数学」
2016年11月24日 | 参考書・問題集徹底解析
「大学への数学」という名称は、多くの受験生が聞いたことがあるはずだ。
大学への数学は、難関大学の受験生を主な対象とした数学の月刊誌だ。
これはこれで有名なのだが、相当ハイレベルであるため、「私にはちょっと…」と躊躇してしまう人が多い。
しかし、大学への数学シリーズには、そういう受験生にも対応した参考書が存在する。
それは、「一対一対応の演習」、通称「一対一」というものだ。
一対一は、教科書レベルの実力を、模試や入試の標準レベルまで引きあげてくれる。
以下の解説を読んで「これだ!」と思ったら、ぜひ一対一に取り組んでみてほしい。
入試に対応可能な実力を育て上げてくれるにちがいない。
一対一の概要
本書は、大学への数学の別冊シリーズの1つだ。
大学への数学自体は月刊誌だが、それとは別に通常の参考書に近い形でいくつか演習書が出版されている。
一対一は以下の6種類に分かれており、理系・文系の両方に対応している。
- 数学I
- 数学A
- 数学II
- 数学B
- 数学III 微積分編
- 数学III 曲線・複素数編
数学Iと数学Aでも分かれているし、数学IIIも内容で二分されている。
価格は、数学IIが1,500円、数学III微積分編が1,400円、他が1,100円である(税抜)。
複数冊買うとそれなりの額になるため、必要だと思うものから購入しよう。
一対一の構成
一対一の各章は、主に次の3パートで構成されている。
- 要点の整理
- 例題
- 演習題
要点の整理は、以降の問題を解くにあたり最低限押さえておきたいポイントが列挙されている。
用語や定義はもちろんのこと、定理や重要な解法が、見開き程度のページ数にコンパクトにまとまっている。
教科書の内容と入試標準レベルのギャップを埋めることが主な目的だ。
ここの内容を押さえておけば、例題や演習題は解きやすくなる。
要点の整理の次に、例題ページがある。
例題は1問1ページで、各々にタイトル(テーマ)が付いており、なんのための例題なのか明確に示されている。
問題の下にはそのテーマにおける必須手法がまとめられている。
その下には、通常の参考書同様に解説が載っている、という流れだ。
例題ページの下部に演習題がある。
演習題は、そのページの例題と一対一に対応した内容となっている。
たとえばベクトルの内積の例題があったら、その下にはやはりベクトルの内積の問題がある、という感じだ。
これが「一対一対応の演習」の名前の由来である。
演習題は例題よりもやや難しくなっており、例題で学んだポイントが身についているか確認することを目的としている。
章の最後に、演習題の解答解説がまとめられている。
初めに重要事項がまとめられており、その次に例題、そして対応する演習問題。
構成自体は、他の参考書と似ておりさして特異ではない。
なお、一対一に登場する問題はすべて実際の入試問題からチョイスされている。
一対一のねらい
構成を知ったら、次は一対一対応が、何を目的とした演習書なのか理解しておこう。
要点の整理では、最低限覚えておきたい定理や解法が紹介されている。
また例題・演習題ではテーマが明示されており、入試問題ですぐに適用できるように設計されている。
こうしたことから考えると、一対一は、例題と演習題を通じて、大学入試で必要となる問題の解き方を着実に身につけていくことを目的としていることがわかる。
本番で役立つ数学力の養成を目指しているのだ。
東京出版の一対一のページでは次のように述べられている。
大学受験の合否のポイントは、標準問題を確実に解くことにあります。 1対1シリーズは、入試問題の中から基本~標準問題を精選し、これを確実に解く実力を養成することを目的としてつくり、 すでに多くの受験生から絶大な支持を得ています。
本シリーズでは、‘例題’と理解度確認用の‘演習題’を1対1に対応させてあります。 例題の解説で学習し、対応する演習題を独力で解くことで、そこで扱うテーマについての理解が深まり、 大学入試レベルの実戦力が自然と身につきます。解法は本質をつき、しかも入試で適用しやすいものを追求していますので、 本番の入試でも無理なく適用できるでしょう。
「大学受験の合否のポイントは、標準問題を確実に解くことにあります。」
これが、一対一の狙いを簡潔に表しているといえる。
もちろん、超難関校を受験するというならば話は別だが、多くの人にとっては、極端に難しい問題を解こうとする必要はない。
入試問題の中には、難問・奇問の類は確かに存在する。
しかし、大学入試で合格するために必要なのはそういった問題ではなく、あくまで標準的な問題なのだ。
一対一では、そうした標準レベルの問題を解くために必要な解法を身につけることを目的としている。
対象となる受験生のレベル
上の引用元である商品紹介ページには、「教科書レベルから入試の標準レベルへと実力を引き上げる」と記されている。
ここからも分かるように、一対一の主な対象は、教科書の内容を一通り理解した段階の受験生だ。
教科書の例題や練習問題は余裕で解くことができるし、章末問題も解ける。
けれども、いきなり入試問題となるとなかなか太刀打ちできない。
一対一はそういう人にとって最適である。
十分な実力が付いている人が一対一に取り組むと、少々退屈な思いをすることになる。
数学が得意で、全国模試等で高得点を叩き出せる人は、一対一よりも大学への数学の本家などにあたった方がいいので注意しよう。
逆に、教科書レベルの理解も不十分な場合は、教科書の内容をマスターすることを優先してほしい。
一対一のメリット
一対一対応は、名前を聞いたことのある人が多いのではないだろうか。
実際、大学受験向けの参考書の中ではかなり有名で、人気な方である。
ここでは、そんな一対一のメリットを探っていこう。
簡潔で便利な「要点のまとめ」
「構成」の項でも紹介したが、一対一では各章の最初の「要点のまとめ」として、必須事項や定理・解法の紹介がなされている。
短いページ数で簡潔にまとまっているのだが、これが案外便利なのだ。
問題演習をする前に、普通は必要事項の確認をしておきたいと誰もが思うことだろう。
しかし、その時に教科書をいちいち全て読み直すというのは面倒なことである。
教科書だとどうしてもページ数が多くなってしまい、本来の目的は問題演習なのにその準備に結構な時間を割くことになる。
数学にたっぷり時間を割く余裕のある人であればいいが、大抵の人はそこまで時間がないはずだ。
要点の確認は、可能な限り短時間で済ませたいところ。
それを叶えてくれるのが、この「要点の整理」である。
とりあえずこの数ページさえ読んでおけば、教科書に載っている基礎事項は大まかにではあるがおさらいすることができ、問題演習に取り組みやすくなるというメリットがある。
テーマを絞った例題
一対一の例題には、たとえば「不定方程式の解き方」のように、細かいテーマ設定がなされている。
入試に対応する十分な実力が備わっていない受験生にとって、これは想像以上にありがたいことだ。
通常の問題集だと、ここまで詳しいテーマは設定されていない。
だが、それだと、自分がどういう目的でその例題を解いたのかわからなくなってしまうのだ。
今自分が解こうとしているのはどういう問題なのか。
学習した内容のうち何を用いれば良いのか。
これは他のどういう問題に応用できるのか。
これを整理しながら勉強するのとそうでないのとでは、学習事項の定着が段違いだ。
一対一では、各々の例題にテーマを付すことによって、受験生が学習内容を正確に把握できるようにしている。
この例題から何を学べるのか、それが明確になっていると、モチベーションも上がるに違いない。
例題と対応した演習題
一対一の演習題は、例題と一対一に対応しており、これが最大の売りなのであった。
例題で学習した解法を運用できるか、すぐに確かめることができるのだ。
解説を読んで理解したつもりになってしまうことが多々ある。
しかし、自力で問題を解こうとすると思うようにいかないものだ。
理解するだけでなく、それを実際に運用する能力が入試では大切なのだ。
例題のすぐ下に対応した演習題が付いていることで、その「運用力」をチェックすることができる。
これも、一対一のメリットといえよう。
省略しない解説
解法に重点を置いた参考書自体は、世の中に多数存在する。
解法に着目した問題集であるほど、細かい計算過程は省略されがちだ。
急に大きな式変形がなされて、「なんでこうなるんだ?」と悩んでしまうこともある。
しかし、一対一ではその心配はいらない。
受験生が上から順に読んでいけば必ず理解できるように、解法のみならず計算過程も丁寧に書いてあるのだ。
解説が丁寧だというのは、自習用の教材として非常に重要な要素といえる。
また一対一では、別解も豊富に載せられている。
解法が1つだけしか示されていないと、「これ以外ダメなのかなあ…」と思ってしまうことがある。
解法が偏ってしまうことで、決まった問題しか解けなくなる可能性もある。
様々な問題に対応できる柔軟性を身につけるためにも、複数の解法を知っておくことは大切だ。
一対一では、スペースの許す限り別解が載っているので、そうした柔軟性を身につけることができる。
演習題に「目標時間」が付いている
大学への数学シリーズに共通して存在するメリットなのだが、演習題には「目標時間」というものが付いている。
これくらいの時間内で正解できたらバッチリだ、という目安だ。
普段問題集を解いているときは、時間制限のことを気にしない人が大半だ。
そもそも時間設定がある問題集自体が少ないし、特に自宅学習では時間を気にせず考え込んでしまうことも多い。
もちろん、時間を気にせず根気よく考える姿勢も大切ではある。
だが、受験というのは時間との戦いだ。限られた時間内でできる限り成果を上げなければならない。
それにあたり、日頃からスピードを意識して演習することが期待される。
目標時間が付いていれば、自分の解くスピードが速いのか遅いのか、把握することができる。
これがあることにより、日頃から本番を意識した演習ができるのだ。
3. 一対一のデメリット
コンパクトにまとまっているのが長所の一対一だが、デメリットも存在する。
以下のことに注意しておこう。
基礎事項の解説は期待できない
各章の初めに「要点の整理」という項目があるのはすでに述べた通りだ。
重要事項が少ないページ数にまとまっているのは便利だが、同時に危険性もはらんでいる。
それは、重要事項についての詳しい説明がほとんどなされないということだ。
定理が紹介されている箇所でも、定理の証明は省かれていることが多いし、載っていたとしても非常に簡潔なものだ。
また、解法をまとめているところでも、なぜその解法で解けるのかは示されない。
そうした、簡潔にまとまっている分、そうした背景の解説は基本的に期待できないのだ。
したがって、「この定理はどうして成り立つの?」というレベルの疑問を持っている人には、一対一は不適切だ。
問題集に取り組む前に、教科書を良く読んで、該当箇所を理解することから始めよう。
このように、教科書の内容を理解しきれていない段階の人を排除してしまうというデメリットがある。
問題数が少ない
1ページに例題と演習題がまとめられている。
この明快な形式は一対一のいいところなのだが、それに伴うデメリットがある。
それは、問題数が少ないことだ。
一対一シリーズは、どれも問題数が70~80問×2(例題・演習題)程度で、世に出回っている問題集と比較すると少なめになっている。
例題が解説がすぐ下についているので、演習問題として使用できるのは100問もない。
したがって、たくさん演習をしようと思っている人にとって、一対一は物足りないものになってしまう。
もちろん、一対一の問題はどれも標準的な良問ばかりで、基礎力を養成できるのは間違いない。
ただ、問題数が少ないというのは練習の機会が不足しがちであることを意味しており、これはどうしてもデメリットになってしまう。
問題数を追求する場合は、一対一の他にもう1冊問題集を使用する等の対策をする必要がある。
一対一の使い方
ここまで、一対一の長所や短所を紹介してきた。
これらを踏まえた上で、一対一の効率的な使い方を紹介していく。
まずは教科書
先述の通り、一対一は教科書レベルの実力を入試標準レベルまで引き上げるのが目的だ。
したがって、教科書の章末問題レベルで解けない問題がある場合は、本書に取り組む前に教科書の勉強を徹底したほうが良い。
基礎が固まっていない状況で応用力を養おうとしても意味がない。
応用するための地盤を形成するのが最優先だ。
教科書や授業ノートをよく復習し、教科書の問題を楽々解けるようになったら、いよいよ一対一の出番だ。
「要点の整理」を読んでみる
一対一に取り組むにあたり最初に行って欲しいのは、「要点の整理」を読むことだ。
教科書は理解しているのだから、ここは読む必要がない、と思うかもしれないが、それは危険だ。
本当に完璧に理解できているのなら飛ばしてしまっても問題ないが、大抵の人は学習内容をうまく整理できていない。
たとえば余弦定理の公式は覚えていても、どういう問題のときに余弦定理を用いればいいのかは理解できていない場合が多い。
そのため、問題演習に入る前に、「要点の整理」を読んで学習事項を整理しておくのだ。
すぐに問題演習に取り組まないのは歯がゆいかもしれないが、先にこういう努力をしておいた方が、ずっと問題を解きやすくなる。
ここは一旦我慢しよう。
例題を読んでみる
要点の整理が済んだら、次は問題編に入る。
まずは、例題とその解説を読んでみよう。
各々の例題には、個別のテーマが設定されているのであった。
それにも注意しつつ、今までに勉強した内容のうち何を使って問題を解いているのかを正確に把握するのだ。
この際、細かい計算や答えにこだわる必要はあまりない。
どこに着目して、どういう解法で解いているのかを理解できれば十分だ。
自分では思いつかない解法だと思ったら、ノートにその解説を写してみよう。
読むだけでなく、手を動かしてみることで学習成果は向上する。
例題の内容が十分理解できたら次へ進む。
演習題に挑戦!
次はいよいよ演習題。
今までに説明してきたように、演習題の内容は例題と強く結びついている。
少々難易度は上がっているものの、基本的には同じ解法で解ける問題が用意されているはずだ。
上の例題を見てしまっても構わないので、同じ解法を自分で運用できるか試してみよう。
例題を見ながら解くことができたら、後日例題を隠して、完全に自力で解いてみる。
実際の入試ではヒントは与えられていないわけだから、最終的には自力で問題を解く練習をする必要があるためだ。
例題を見ても問題を解くことができなかったら、解説を読んでみよう。
一対一の解説は大変詳しいので、例題を理解できたのならこれも理解できる。
解説を読んで理解できたら、あとで解説を見ないで解き直してみるのだ。
このように、初めは例題や解説に頼ってしまって問題ない。
それらをヒントにしながら、同じ解法で解いてみるのだ
余裕が出てきたら、ノーヒントで解く訓練を始めてみよう。
一対一レベルの問題をノーヒントで解ければ、入試の基礎力は身についたも同然だ。
まとめ
例題と、それに対応した演習題。
この対応が、あなたの解答力を育て上げてくれる。
なんども述べている通り、教科書レベルを理解してからでないと取り組んでもロクなことが起こらない。
基本中の基本は完璧にしたうえで一対一に挑戦してみるのだ。
ぜひ一対一で、あなたの数学力を入試の標準レベルまで引き上げて欲しい。
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