漢文句法(句形)は「形・書き下し・意味」の三段構え
2016年12月07日 | 国語
漢文では、句法・句形の知識が必須である。
たとえセンター試験のような択一式の問題であっても、文章の内容を正確に理解する上で、これらは避けては通れない。
しかし、句法の勉強に苦労している受験生は多い。 句法は英単語などと比較すると暗記しなければならない個数は少ないが、似た形で意味が異なっているものや、日頃使用しない漢字が含まれているものもある。
したがって、正確に暗記していかないと途中で混乱する羽目になる。
今回は、漢文における句法(句形)の勉強法について説明していく。
単に暗記法のみ開設するのではなく、そもそも句法とはどのようなものなのか、句法の前に勉強しなければならないものは何なのかといった点も含めて説明していく。
これを読めば、効率的かつ正確に句法を暗記していけるに違いない。
「句法」とはどのようなものか
まずは、句法そのものの性質を探ってみる。
手当たり次第に勉強するのではなく、句法の性質を理解した上で適切な勉強法を見つけるのが重要。 受験勉強では、「まずは敵を知ること」を忘れずに。
前提知識
そもそも私たちは何のために句法を学ぶのか考えてみよう。
私たちは、何の知識も無しに白文(=返り点、読み仮名のいずれもない文)を見せられても、読解するのは困難を極める。
もちろん使用されている文字は漢字なので、「なんとなく」理解することは可能であろう。
しかし、細かい修飾関係やニュアンスまでは理解しきれないものである。
それは仕方のないことだ。 なぜなら、漢文と日本語では使用されている漢字のバリエーションも、文法も、全く異なるためである。 従って、漢文を日本語に結びつけるルールが要請されるのだ。
ここで登場するのが句法(句形)である。 句法とは、漢文を日本語的に読む際の構文のことである。 辞書的な定義は次の通りだ。
- 詩文や俳句の作り方。
- 漢文を訓読する際の、基本的構文や文法事項。
「大辞林」(三省堂)より
漢文においては、言うまでもなく2の意味である。
ここで「訓読」の意味が気になるので、それも載せておく。
- 漢字を,その字の意味に基づいて訳した日本語で読むこと。「春」を「はる」,「北風」を「きたかぜ」と読む類。くんよみ。 ↔ 音読
- 漢文を日本語の文法に従って、語の順序を変えたりしながら直訳的に読むこと。「謹啓」を「つつしんでもうす」、「不可侵」を「おかすべからず」と読む類。漢文訓読。
- 難しい言葉をわかりやすく説明すること。
(同)
漢文における訓読は、もちろん2の意味である。
まとめると、漢文における句法の役割は、
漢文を日本語文法に従って直訳的に読むための、基本的構文や文法事項
ということができる。
句法の例
ここで、句法の例を幾つか挙げておく。 白文を直接理解することと、句法を用いて理解することの違いを感じよう。
- 不復A:「復タAセズ」=「二度と〜できない」
例 兔不可復得 →「兔復た得るべからず」=「二度とうさぎを捕まえることはできない」
- 独〜乎:「独リ〜ンヤ」=「どうして〜か、いや〜ない」
例 独無所同然乎 →「独り同じく然りとする所無からんや」=「どうして同様にそうだと認めることがないだろうか、いやあるはずだ」
2 漢文句法と古典文法・英文法の関係
ここまで、句法は何のために存在するのか説明してきた。
句法は、漢文を日本語に従って訳すためのツールなのである。
句法の存在意義を再確認したことと思うが、句法には見落としてはならない重要な性質が存在する。
実は、句法の学習と古典文法・英文法には密接な関係があるのだ。
この章ではその関係について説明していく。
句法は古語で記述される
その重要な性質とは、「句法は古典文法で記述されている」ということだ。
「そんなの当たり前でしょ。」と思うに違いない。 日頃の漢文学習ではあまり意識しないかもしれないが、これは思いの外重要な性質だ。 例えば「A使B」で「AヲシテBセシム」という使役の意味の句法がある。
これは現代語訳すると「AにBさせる」という意味になっている。
書き下し文の意味を理解するためには、使役の助動詞「す・さす」を知っていることが要求されるのだ。
いくら「AヲシテBセシム」という文字列を暗記していても、それを現代語に訳せなければ内容理解には結びつかないことがわかる。
ここまでくると、句法の役割について次のことがわかる。
漢文を読解するためには、句法のみ勉強すればよいのではなく、句法に含まれる古典文法を理解する能力が前提となっている。
まとめると、漢文読解には古典文法も必要なのだ。
漢文と英文法
句法と古典文法が関係しているのは、さほど意外なものではない。
書き下し文を見れば、「古典文法っぽいなあ」と誰もが気づくからだ。 しかし、驚くべきことに漢文は英文法と似ているのだ。
どう考えても全く異なるこの2言語、一体何が似ているのだろうか。 それは「語順」である。 例として、次の漢文を見てみる。
子曰、「爲政以徳。譬如北辰居其所。而衆星共之。」「為政第二」(論語) より
「爲政以徳」を読解してみよう。
これは「A以B」=「AスルニBヲ以テス」、つまり「Bを用いて(Bという手段で)Aする」という意味である。
現代語訳してみると、「徳のある政治をする」といったところだ。
「爲政以徳」は、書き下し文では 政→為→徳→以 である。
元の漢文とは大きく異なる語順であることが直ちに分かる。
ここで、英語における同じ構文を考えてみよう。
<例文>
He helped an old woman carry her baggage with kindness.
<訳>
彼はその老女が荷物を運ぶのを優しく手伝った。
この文の動詞は helped an old man… である。
上の漢文でいうところの「以」に対応する語はwithであるから、「A以B」において
- A=helped an old woman carry her baggage
- 以=with
- B=kindness
とすれば、先ほどの漢文と全く同じ語順ではないか! このように、漢文と英語は語順に関して似ている箇所がある。
一つは、動詞と目的語の順番だ。 両方とも 目的語→動詞 の順番になっている。 「読書」と”read a book”を比較すると明快である。
他にも、上で上げた 前置詞→目的語 の順番など、共通点は様々だ。 漢文と英文法の関係を理解できたと思う。
英文法の知識が漢文学習で直接役立つことは少ないだろうが、語順に関して時折参考にすべきである。
句法の勉強法
ここまで、漢文句法とはどのようなものか、古典文法・英文法とどう関係しているかについて説明した。
句法を勉強するにあたり何を意識したら良いか、また前提知識として何が必要か。
句法の形とその書き下しのみを暗記すれば良いわけではないというのは、ここまで読んできたあなたであれば直ちに納得するはずだ。
まずは古典文法の基礎
先述の通り、漢文の句法は古典文法で記述されている。
従って、内容を正しく理解したり現代語訳したりするためには、古典文法の知識が要求されるのである。
句法そのものの学習を始める前に、古典文法について勉強をしよう。
漢文学習にあたり勉強しなければならない古典の内容は、ほぼ「助動詞の活用」に尽きる。
様々な助動詞の活用と意味を理解していないと正確に訳せないため、古文の助動詞については妥協なく勉強しなければならない。
漢文を受験で使用する受験生は古文も必須だろうから、これを機に思い切って助動詞を勉強してしまうのが良い。
古文・漢文の学習に壁を感じている人や苦手意識を抱いている人は少なくないが、助動詞の活用をマスターすれば一気に視界はひらけてくる。
なぜなら、助動詞を理解するだけで文章の意味を一気に理解できるようになるためである。
少しの間我慢して暗記すれば、古文・漢文共に一気に楽になる。 そう考えれば、助動詞の活用を勉強しない手はない。
助動詞の活用以外は、漢文で必要な古文知識はない。 あくまで古代中国の文章であるので、平安時代の風習や歌人の名前などは全く不要。
助動詞だけで良いとなると、少々気が楽になる。 具体的な勉強方法としては、古典文法の参考書を何度も読むことから始めよう。
どのような助動詞があって、それぞれどんな意味を持っているのか地道に学ぶのだ。
参考書の巻末などには、確実に助動詞の一覧が載っているので、それも活用すると良い。
それが済んだら、次はいよいよ活用の暗記に入る。 活用を暗記する上で有効なのは、とにかく手と口を動かしてみることだ。
活用を呪文のように口で唱えるのは意外と有効だ。 少なくとも、文字を目で追うよりかは早く定着する。
また、活用を手で書いてみるのも大切だ。 実際に手を動かすことで印象に残りやすくなる。
とにかく、目だけでなく色々な器官を働かせて、積極的に学習しよう。
なんでもかんでも暗記するという態度は好ましくないが、助動詞の活用は(残念ながら)ほとんど暗記するほかない。
地道に覚えるしかない以上、早い時期に勉強を始めておけば後が楽である。
句法の勉強にあたり
古典文法(主に助動詞)の知識が身についてきたら、次はいよいよ句法の学習に入る。
暗記ばかりで面倒に思うかもしれないが、大学受験で登場する句法はたかだか100弱である。
英単語や古文単語と比較するとずっと少ないわけだから、気負わずに勉強したいところだ。
忘れてはいけないこと
句法学習の際に忘れてはならないのは、「句法の形とその書き下しのみを覚えても意味がない」ということだ。
たとえば先ほども登場した「A使B」という句法を学ぶ際に、この形と「AヲシテBセシム」という書き下しのみ暗記したとしよう。
それだけで満足してしまう受験生も多いが、実際は不十分だ。 形だけを覚えても、その意味を理解しないことには読解できないし、点数にも結びつかないためである。
本当の意味で理解するためには、上のほかに「AにBさせる」という意味も身につけなければならないのだ。
句法の形と書き下し、それに意味。 これらのどれか1つでも欠かさないよう注意して勉強してほしい。
そして、句法学習では「例文」も侮れない。 たとえば「為A所B」=「AノBスル所トナル」という句法がある。
表記の都合上AやBという文字を使用しているわけだが、これだけでは意味を想像しにくい。
できたら、AやBには具体的に意味を持った語が入っていてほしいものだ。
例文はそのためにある。 形式的な表記だけでなく、実際の漢文でどのように用いられているのかを見て学ぶことで、句法に対する理解が深まるのだ。
具体的な勉強法
句法を扱っている参考書は多数存在する。 各自の好みにあったものを選べば良いが、ここでは「漢文ヤマのヤマ」を推奨しておく。句法の勉強法には様々存在する。 参考書をじっくり眺めてひたすら暗記するという方法をとる受験生が多いが、それは賢い方法とは言えない。
先ほども触れたが、できる限り多くの器官を働かせるというのがコツだ。 ただ参考書を眺めているのみでは目しか働かない。
可能であれば手や口、耳を存分に利用したいところだ。 従って、考えられる勉強法の一つは「手で書くこと」である。
句法の書き下しやその意味、必要に応じて例文を手で書いてみるのである。
参考書を読んでいるだけだと、頭がぼーっとしてしまい集中できないという人も多い。
そこで、自分から手を動かすことで積極的に学習できるというわけだ。
これは漢文に限った話ではなく、英語など他科目でも大いに役立つ勉強法だ。
ただ、中には「手で書くのは億劫だ」と思う受験生もいる。
ひたすら書き写すというのは手が疲れるし、面倒なのでモチベーションが保てないというのは一理ある。
そういう人にお勧めなのは「音読」だ。 句法の書き下しや例文をまず読み、次に音読するのである。
手で書く場合同様、音読も積極的に内容を理解するきっかけとなるため、ただ読むよりも知識の定着は圧倒的に早まることだろう。
音読の利点はそれだけではない。 実際に声に出して読むことで、文の構造を把握できているか否か自分で判断できるのだ。
句法や文の構造を理解していないと、どういう語順で読めば良いのか理解が不十分になる。
その状態で音読すると、途中で突っかかってしまうのである。
逆に構造をちゃんと理解していれば、次にどの漢字を読めば良いのかわかるので、問題なくスムーズに音読できる。
また、読み方を知らない漢字や置き字などを把握できているかどうかも判明する。
さらに、文の主語はなんなのか、述語はなんなのかも確かめられる。
このように、音読をすることで、自分が文の構造・内容をどれだけ理解できているかチェックすることができるのだ。 黙読するのみだと気づかない問題点の多くは、音読をするだけで発見することができる。
漢文に限らず、音読は大変有効な勉強法だ。 音読をするのは小学生や中学生までだ、という固定観念を抱くのは誤りである。
黙読だけでなく、手で書いたり音読したりする。 自分の好みにあったスタイルを採用すると良い。
特に、音読は様々な効果が期待できるので強く推奨しておく。
まとめ
句法はなんなのか、何を学ぶ必要があるのか、そして具体的な勉強法を説明した 基盤となるのはあくまで古典文法なので、まずはその勉強から始めよう。
そのうえで、句法は音読などを駆使して効率良く学習していくべきだ。
漢文で覚えなければならない句法は100個もない。
集中して、正しい勉強法で学べば短期間で大きな成果をあげることができる。
ぜひあなたも、句形を完璧に学習し、漢文を大きな得点源にしてほしい。
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