単語、句法、読解力の3本柱を用いた漢文の正確な訳し方!
2016年12月08日 | 国語
漢文読解のためには、日本語訳が欠かせない。
たとえ日本語訳の問題が出題されなくても、文章の内容を理解しようとすると、どうしても日本語訳という作業は避けて通れない。
したがって、漢文が受験科目に含まれているならば、訳す能力は不可欠なのだ。 そうは言っても、漢文の日本語訳は難しい。
漢字の羅列を、日本人が読んでも理解できる平易な日本語にする必要があるのだ。
今回は、漢文を単語、句法、読解力の3本柱を使って、上手に訳す方法を説明する。
漢文の翻訳は簡単に成し得ることではないが、ひとたび身につけてしまえば入試漢文は確実に攻略していける。
以下をよく読んで、訳し方のコツを理解してほしい。
漢文を日本語訳するのに必要なもの
勉強法の説明に入る前に、漢文を日本語訳するとはどういうことなのか考えよう。
そもそも日本語訳にはどういう能力が要求されているのかを知るのは大切だ。 これを理解すれば、効率的な勉強法は自然と見えてくる。
単語の知識
日本語訳をする上で必要となるものの一つに、「単語の知識」がある。 たとえば、次の漢文の太字部の日本語訳が出題されたとする。
春眠不覚暁 処処聞啼鳥 夜来風雨声 花落知多少「春暁」(孟浩然) より
有名な漢詩「春暁」である。
「春眠不覚暁」を訳すことを想像してみよう。
「春」と「眠」、それに「不」は、日常でも頻繁に用いる単語であるから意味が分かりやすい。
「暁」もなんとなく予測はできる。
ところが、「覚」の訳には注意が必要だ。
「おぼえる」っていう意味じゃないの?
そう思ったあなたは、単語の知識が不足している。
漢文や古文単語における「覚」は、「目がさめる」や「感じる」という意味があるのだ。
訳し方の例としては、
「春の睡眠はとても心地よく、夜明けにも気づかず目が覚めなかった。」
というふうになるが、この訳は「覚」の意味を正確に捉えていないことにはできない。
このように、漢文を訳す上で単語の知識は必須である。
日常で使用していない漢字も多く含まれるうえ、よく用いる漢字であっても意外な意味を持っていることがあるので、要注意だ。
句法(句形)の知識
漢文の読解・訳し方には単語の知識が必須であることがわかった。
だが、それだけでは不十分なのである。
ほとんどの高校生が知っていることだろうが、漢文には「句法」と呼ばれるものが存在する。
次の漢文の太字部を訳すことを考えよう。
学而時習之、不亦説乎。
有朋自遠方来、不亦楽乎。
「学而」(論語) より
この文も、知らない人はいないだろう。
さて、「不亦説乎」の訳だが、これは先ほどとは少々毛色が異なる。
「不」の意味は極めて平易だし、「説」は「よろこブ」という読み仮名があるので意味を容易に推測できる。
ただ、「亦」という漢字があるため、初見だと困ってしまうのだ。
この一節は、単語の意味を理解しているだけではなかなか訳すことができない。
ここで必要になるのが「句法」の知識だ。
句法は、言って見れば文全体の意味の骨格である。
1文字、あるいは1単語といった細かい区切りでの意味を理解していても、文の骨格がわかっていないことには自然な訳をすることができない。
たとえば上の文では、「不亦〜乎」で「なんて〜なことだろう」という感嘆(反語)に近い意味になるのである。
文字の意味を理解しているだけではだめで、こういう句法についての知識も要求されるのだ。
話の流れを理解する力
単語と句法の知識があれば、とりあえずその文を訳すことはできる。
しかし、意外に思うかもしれないが、実はそれでもまだ不十分なのだ。
もう一つ、漢文を訳すのに必要な能力がある。
それは、「文脈を理解する力」だ。
たとえば、次の太字部の日本語訳が出題されたとする。
宋人有閔其苗之不長而揠之者。
芒芒然帰、謂其人曰、
「今日病矣。予助苗長矣。」
其子趨而往視之、苗即槁。
天下之不助苗長者、寡矣。
『孟子』公孫丑上 より
「助長」という語の由来である有名な漢文だ。
この文に登場する単語自体は、大して難しいものではない。
しかし、単語や文法の知識だけでは解き明かせない要素がこの中にある。
それは「之」が何を指しているか、ということだ。
中学受験や高校受験を経験した人であれば、国語でしばしば「『これ』が指している内容を答えよ。」といった問題に出会ったことがあるだろう。
漢文でも、それと同じことが要求される。
つまり、指示語が何を指しているのか、文章中から読みとらなければならない。
指示語が指している内容を理解するには、その箇所だけでなくそれまでの内容を全て理解するしかない。
ここでは単語や句法の知識というよりも、文脈把握の力つまり「読解力」が役立つことになるのだ。
ここまでのまとめ
ここまでの内容を一旦まとめると、漢文の日本語訳で必要な力は次のようになる。
- 単語の知識
- 句法の知識
- 読解力
これらが3つ揃ってはじめて、自然で正確な訳ができるのだ。 まずはこの3点を忘れないようにしよう。
それぞれの能力を養うには
以降、これらを身につけるためには何が必要で、どういう勉強をすれば良いか説明していく。 単語、句法、文脈把握、別々に詳しく見ていこう。
単語の知識を豊かにする
まずは、単語の知識を増強することから考えよう。 といっても、漢文学習において単語の習得はさほど大変ではない。 漢文で知っておくべき単語の数は、せいぜい150とか200といった程度である。 英語では、難関校受験の場合10,000ほどの語彙力が必要であるが、それと比べたら圧倒的に少ない。 しかも、私たち日本人はすでに漢字に関する豊富な知識を持っている。 それに少し手を加えてやるだけで、漢文の単語はあっさり覚えられてしまうのだ。 実は、漢文の単語のみを扱っている参考書はほとんど存在しない 大抵の場合句法の本の付録として乗っているくらいだ。 それだけ、漢文単語の学習は簡単なのである。 マイナーな単語を覚える必要はない。 漢文の世界には、日本人が用いる数よりずっと多い漢字が用いられており、いちいち単語を覚えている余裕はないのだ。 逆に言えば、マイナーな単語は大学入試で必ず注釈がついているので心配ご無用。 具体的なやり方としては、授業等で漢文を読んだ際に意味を知らなかった単語を、ノートや暗記カードに書き留めておく。 そして、何日間かかけてそれをゆっくり覚えていけば良い。 通学で電車に乗っている時など、小さな空き時間を見つけたらそういうときにパパッと勉強する。 それくらい短時間でも十分成果は上がるのだ。
句法をしっかり身につける
単語の次は、句法を身につけることを考えよう。 句法は単語と異なり、参考書が大変充実しているので、教材に関しては安心だ。 ただ、参考書の中にも良し悪しがあるので、そこは注意しよう。 一つのものさしは、「例文が充実しているかどうか」である。 句法は、たとえば「A使B」のように記号で表記されていることが多い。 一般形を示すにはこうするしかないのだが、AとかBとかいう記号で書かれても実感がわかないのが正直なところだろう。 これだと句法が理解しにくいし、忘れやすくなってしまう。 意味をわかりやすくし、印象に残るようにする鍵は例文にあるのだ。 例文でストーリーとともに句法を学べば、句法の形だけを詰めこんだ場合よりもすんなり頭に入ってくれる。 実際の試験でも「あ、あのとき勉強したやつだ!」というふうにピンとくる可能性が高くなる。 こうした理由から、漢文の参考書は例文が充実しているものを選ぶようにしよう。 あくまで一例だが、次の「漢文早覚え速答法」などがオススメだ。
早覚え速答法は、例文を読むことで効率良く句法や単語を学べるよう構成されている。
一通り句法の紹介がなされた後に例文があって、そこには様々な句法や単語が凝縮されている。
無関係な例文の集合体ではなく、大きなひとまとまりの文になっているため、ストーリーに一貫性がある。
したがって、一つの漢文をまるまる覚えてしまえば、そこに含まれる句法や単語が全てセットで頭に入る、という寸法だ。
英単語の参考書にDUOというものがあるが、それの漢文バージョンだと思えばよい。
読解力を鍛えるには
3つ目のポイントである読解力の鍛え方を考えよう。
みなさんは、普段「読解力」を鍛えるために何か勉強をしているだろうか。
1冊だけで読解力が完成するような参考書は実は存在しない。
なぜなら、読解力というのはたくさんの文を読まないことには身につかないためである。
いくら丁寧に読んでいたとしても、幾つかの文章だけではなかなか読解のセンスは育たない。
何十、何百も読んで初めて、文脈を正確に読み取る能力がついてくるのだ。
それは漢文でも同じことである。
登場人物の気持ちや発言の意図を察するには、たくさんの読解経験が不可欠だ。
教科書に載っている漢文はもちろんのこと、その他参考書の例文などをとにかく読んでみよう。
初めのうちは意味が理解できなくても構わない。
「読書百遍、意自ずから通ず」というように、根気よく読んでいれば次第に見えてくるものがある。
わからない単語があれば、辞書を引いて構わない。
とにかく、自分の力で漢文を読み進めていくという経験を重ねよう。
そうすれば、漢文の読解力は自然と身についてくる。
数多くの漢文を読んでいくと、定番のお話の展開があるということが分かる。
たとえば、邪智な君主が治めている国では必ず自然災害が勃発する、という展開が頻繁に見られる。
君主の人となりが国の将来に影響することを婉曲的に表現しているのである。
こうした定番の展開を知っておけば、入試本番でも「ああ、こういう話ね。」という風に前もって予想しながら読むことができるのだ。
漢文を読みまくることの長所はこんなところにもある。
問題演習の時にすべきこと
ここまで、漢文読解には単語の知識、句法の知識、読解力が必要であるということを述べた。
そして、各々を身につける方法も説明してきた。
では、実際の問題演習や試験ではそれをどのように活かしていけば良いのだろうか。
重要箇所に印をつける
現代文で当然のようにやっていることだろうが、本文中の重要箇所に印をつけるのは漢文においても行うべきだ。
重要箇所というのは様々な意味がある。
意味上重要である箇所のみならず、自分が知っている句法を見つけたらそれもマークしておくと良い。
そして、句法の部分だけ意味をそばに書いておくのだ。
日本語訳問題として出題されるのは、大抵の場合重要な句法を含んでいる箇所である。
したがって重要句法が登場している箇所をあらかじめ知っておけば、日本語訳は格段に簡単になる。
意味上大切な箇所に線を引くのも欠かせない。
これをやっておけば、文章の大筋を瞬時に把握することができる。
勧善懲悪のストーリーなのか、自業自得の小話なのか、はたまたずっと深い内容なのか。
どういう種類の話か把握しておけば、日本語訳で大きく誤ることはなくなるし、わからない文があっても意味を推測しやすくなるのだ。
このように、漢文を読む際に重要(だと自分が思う)箇所をマークしておくことで、大意を把握しやすくなり、日本語訳も正確になる。
全ての単語をしっかり訳す
日本語訳の採点基準がどうなっているかは大学により異なるだろう。
しかし、単語ごとに正確に訳せているかは重要なポイントと言えそうだ。
漢文を日本語訳する際、どの言葉も忠実に訳に反映させる習慣をつけよう。
大体こんな感じ、というノリで日頃から訳していると、いつまでたっても正確な訳をできず、試験でも点数がもらえない。
たとえば「かならズ〜スベシ」という書き下し文であれば、日本語訳の中に必ず「ベシ」に相当する意味を盛り込む。
「大体合ってれば良い」という考え方は捨てよう。
難関校の受験生であればなおさら、そのような甘い考えは通用せず、採点官にすぐ見破られてしまう。
部分点狙いで、ぼんやりとした曖昧な日本語訳を書くのは、賢いようで実は最も愚かな方法だ。
なぜなら、文章を理解できていない受験生でも曖昧な文を書くことは可能だからである。
無難で当然のことばかり書かれても、その受験生が本当に深くまで理解しているか判別することができない。
したがってそうした答案に十分な点数を与えることはできないのだ。
妥協せず、細かいところまでしっかり訳に反映させるようにしよう。
指示語の内容をはっきりさせよう
漢文の日本語訳では、「『其』の指す内容を明らかにしつつ訳せ。」という問題がしばしば出題される。
また、たとえ要求されていなくても、指示語が文中に含まれていたらその内容を明記するのが普通である。
読解するときにも和訳をする時にも、指示語が何を指しているのか理解するのは必須だ。
日本語でも同じことが言えるが、指示語が指す内容は普通はその前に存在する。
「其」、「之」といった語が登場したら、それが指している内容はそれより前に書いてあるはずであるから、それを理解しながら文章を読もう。
指している内容がわかったら、語の傍にメモしておくと、後で問題と解く時に助けになる。
一度何もせずに問題を読み終わってしまうと、次に問題を解く時にもう一度文章を読み直す必要が出てくる。
そうなっては大変なタイムロスなので、1度目の読解で可能な限り多くのことを吸収したいものだ。
そのためには、重要箇所に印をつけたり、指示語の内容をメモしたりという小さな努力を積み重ねる必要があると言える。
まとめ
漢文の日本語訳に必要は力やその勉強法について詳しく説明してきた。
日本語訳をするためには、次の3つが不可欠なのであった。
- 単語の知識
- 句法の知識
- 読解力
日頃の学習でこれらを身につけておけば、入試漢文では大変な苦労をする必要はない。
ぜひこれら3つの力を身につけて、漢文を受験で頼れる得点源にしてほしい。
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