「計算力・思考力・記述力」3要素から見る数学の解き方とは?
2019年04月28日 | 数学
数学が苦手な人にはいくつかのパターンがある。
一つは、各々の分野の詳細なテクニックを知らないということだ。
たとえば漸化式数列の問題では特性方程式を解くという手法があるが、それを知らないと少々問題を解くのに苦労することになる(解けなくはないが)。
もう一つは、そもそも数学の問題の解き方を知らない場合である。
具体的な一問一問ではなく、もっと抽象的に「解き方」がわからないのだ。
そのままでは、いくら時間をかけても問題を解けるようにはならないというのが正直なところだ。
今回は、そもそも数学の問題をどのように解けば良いかを説明していく。 何を心がけて問題を解くのか。
そもそも問題を解くとはどういうことなのか。 それをしっかり理解すれば、今までよりもずっと問題を解けるようになる。
「問題を解く」とはどういうことか
少しアバウトな話になるが、問題を解くとはどういうことなのか、いくつかの例を通して見てみよう。
そんなの知っているよ、という人もここでもう一度確認して欲しい。
問題文の条件を使う
例として、次のような問題を考えてみよう。 公式を知っていればすぐに解ける、超簡単な問題だ。
<例題> ∠B=90°の△ABCにおいてAB=6,BC=8であるときCAの長さを求めよ。
ただの三平方の定理の問題だが、ここから数学の問題の構造を把握することができる。
実際に問題を解くときは、とすればよいが、このとき使用した情報を整理すると
- ∠B=90°
- AB=6
- BC=8
となる。 この問題はこれだけで解くことが可能であることに注意しよう。
もしここから情報が一つでも抜け落ちていると、問題は絶対に解くことができなくなる。
たとえばAB=6という情報を一つ抜くだけで、この問題は解けなくなってしまうのだ。 つまり、以下の二つのことがわかる。
数学の問題を解く時は、
- 問題文にある条件を用いて解く。
- 問題文にある条件で、不要なものはない。
数学に慣れている人にとって、これは非常に当たり前のことである。
しかし数学の問題が解けない人の中には、これを理解できていない人が少なくないのだ。
問題が解けない生徒の答案をみると、問題文の条件のうちまだ使っていないものがあり、それに本人が気づかないでいる場合がある。
それは非常に馬鹿馬鹿しい話だ。 問題文に示してある条件の中に、無駄なものは基本的に存在しない。
ダミーとして時折余剰の情報がある場合は稀に見られるが、それはあくまで例外的なもの。
質の高い問題では、余分な情報は排されているのが通常である。 問題文の条件を用いて問題を解くということ。
そして、条件を全て使用するということ。 この二点を意識するだけで、問題解決の見通しは非常に良好になる。
誘導問題の意味を理解する
もう一つ重要なのは、「誘導問題の意味を理解する」ということだ。 まずは例を見てみよう。
<例題> AB=3,AD=4,AE=5の直方体ABCD-EFGHがある。
- 四面体A-BDEの体積を求めよ。
- △BDEの面積を求めよ。
- 点Aから△BEDに下ろした垂線の長さを求めよ。
この誘導は、意味を察しやすい例である。 この問題の最終目標は3を解くことだが、その過程でなぜ1,2という問題があるのか考えてみよう。
単におまけとしてついているだけなのか。 そういうことはない。
1,2はいずれも3を解きやすくするための誘導なのだ。
どういうことか説明すると、錐体の体積の公式を用いて垂線の長さを求めようとしているのだ。
その際、錐体の体積Vと底面積Sが必要となる。 そのため、それを誘導問題として各々求めさせているのだ。
これは初めに挙げた「問題文の条件を全て用いる」こととは決定的に異なる。
何が違うのかというと、誘導問題はなくても原理的に解けるという点である。
たとえば今の問題で1,2の問題がなかったとしても数学の実力がある人ならば解くことは可能だ。
しかし、1,2がない場合の正解率とある場合の正解率を比較したら、いうまでもなく誘導があった方が正解率は上がる。
このように、新しい情報を付加するわけではないが問題の解決を助ける設問は、一般的に誘導問題と言われる。
受験数学では、この「誘導に乗る」というのも大切になる。
方針と計算の双方が必要
数学の問題を解くというのは、大きく分けて二段階の行為からなる。それは
- 方針を立てる
- 実際に計算する
ということである。 これも例を挙げて、両者の違いを見てみよう。
<例題> 次の定積分を計算せよ。
この問題は、単に公式に代入して終わり、というものではない。
ぱっと見では解法がわからないので、イロイロ試したうえで方針を立てるという作業が必要だ。
結果からいえば、この問題は部分積分を繰り返すことにより求値できる。 しかし、それだけでは問題を解けたとは言えないのだ。
すなわち、実際にその計算を実行する必要がある。 方針を立てられても、計算ミスをしてしまうと不正解になる。
一方方針すら立てられないと何もできない。 このように、問題を解く上では方針と計算の両方が要求されるのだ。
「問題を解く」とはどういうことか
ここまで、数学の問題を解くというのはどういうことなのかを探ってきた。 重要なポイントを一旦まとめておこう。
- 問題文にある条件を過不足なく用いる。
- 誘導問題に乗る。
- 方針を立て、計算するという二段階が必要
数学が苦手な生徒は、まずこれらを意識しなければならない。 闇雲に問題を解いても、本人にとって無意味なものに終始することが予想される。
問題を解くのに必要な力
次は、こうしたポイントを踏まえてどんな力を養えば良いのかを考える。
数学の特徴を理解した上で、正解にたどり着くのに必要な能力を見て行こう。
計算力
やはり、問題を解く上で計算力は大前提となる。 せっかく解法を見つけても、それに従って正確に計算をする力がないと結果に結びつかない。
記述式の大学入試では、計算ミスをしてもある程度の部分点はくれることがある。
しかし、答えがあっていないとやはり大きく減点されてしまうものだ。
さらに言えば、センター試験のようなマーク式の試験では計算ミスが命取りである。
いうまでもなく、解答養子に記すのは答えの数字のみ。 計算ミスをしてしまうと、たとえ考慮過程が妥当であったとしても0点となる。
このように、正確で素早い計算力は大学入試数学で必須の力だ。 時間内に、正しい答えを出す。 この2つが揃って初めて合格できよう。
思考力
解答の方針を立てる力が思考力だ。 これも、問題を解く上ではどうしても欠かせない。
最初に挙げた三平方の定理の問題は、定理さえ知っていればそれに値を代入するだけで正解することができる。
しかし、実際の大学入試では公式を一度用いて終わり、という問題は基本的に1問もない。
中堅以上の大学を受験するならば当然のことだ。
ぱっと見で解法を思いつくのはむしろ稀であり、普通は自分でゼロから考えなければならないのだ。
そういう時に、自分で問題を解決する能力が重要となる。
公式を数度用いる程度の組み立て力しかないと、難しい問題は解けるようにならない。
経験値を頼りに解法を探ることもある。 ゴールから逆算する解き方もある。 核心を理解すれば一瞬で答えが出るときもある。
どういう解法が最適かというのは問題によって様々だ。 自分一人の力で、問題文に書いてあることから方針を立てねばならないのだ。
この「思考力」が、数学攻略で必要となる第二の力である。
記述力
センター試験等のマーク形式を除き、大学入試では記述式答案である場合が多い。
証明問題でなくとも、答えに至る過程を記しておくことが要求される。
この時、たとえ問題が解けていたとしても記述力が不十分だと満点は取れない。
記述式の問題では、自分の考えをどう文字で表現するかというのも問われているのだ。
たとえば、式変形が過剰に詳しく、その分解答の方針がほとんど明記されていない答案があったとしよう。
それを読んだ時、採点官は「この人はなんで急に計算を始めたんだ。これはなんの計算だ?」と疑問に思ってしまう。
こうしたすぐに理解できない答案は、試験で絶対に避けるべきである。 逆に計算の過程が粗すぎるのも問題だ。
置換積分の詳しいやり方を省略して答案を書いてしまうと、「なんで急に変数が変わっているんだ?」と読者を困惑させることになる。
このように、答案を読む人がすんなり理解できるような答案作りを目指すというのが、大学入試本番を見据えると欠かせない力である。
問題を解く能力ばかり重視する人がいるが、この「記述力」をおろそかにしてはいけない。 高得点を取れる答案にはやはりそれなりの理由がある。 これについては後で詳しく述べることとする。
問題を解くのに必要な力
以上より、問題を解くのに必要な力は
- 計算力
- 思考力
- 記述力
と大別できることが分かった。
これらは優劣の関係にあるわけではなく、どれも一様に大切なことだ。
数学の勉強をするにあたって、どれか1つ、2つに偏ってしまうとなかなか点数に結びつかない。
数学の「解き方」の勉強法
数学の問題を解くとはどういうことなのか。 問題を解く時に要求される力はなんなのか。
こういった根幹にあたる内容を説明してきた。 次はいよいよ、問題の「解き方」の勉強法に入る。
計算力を養うには
計算力を養うための最も明瞭な手段は、やはり計算練習をたくさんこなすことである。
参考書を読めば計算の方法は大体わかるが、自分で計算できるようにするには結局自分で練習するのが一番だ。
微分や積分、数列、ベクトル、確率… どれも、自分で計算練習することで次第に問題に慣れていく。
自分なりの経験値があることで、計算を簡略化する術を会得することが可能だ。
それだけでなく、計算ミスに気づけるセンスを養うことができる。 計算方法を何も知らないのに、出てきた答えがあっているか否か判断することはできない。
しかし多数の問題を解いてきた身なら、答えの妥当性を多少は判断できるのだ。 次の例題を考えてみよう。
<例題> 漸化式 で与えられる数列の一般項を求めよ。
これでもしという答えが出てきたとしたら、計算ミスであることがすぐにわかるのだ。
その理由は、漸化式の係数3に隠されている。
各項がものすごく大きくなると、もはや定数の足し算引き算はどうでもよくなる。
つまりこの数列は、最終的に公比3の等比数列に近づくべきなのだ。 それなのにという公比2の数列になることは100%あり得ない、という理屈だ。
このように、経験値があれば本番計算ミスに気づくことができる。
いちいち初めから検算する必要がないので、こういう方法の方が圧倒的に効率的だ。
以上のような理由で、計算力を上げるためには余計なことを考えずにひたすら計算練習するのが良い。
難しい問題ばかり解いていると、計算以外(考え方)の部分で苦労してしまい、計算練習の効率が低下してしまう。
そういう時は、チャート式のように高難度ではないがたくさん問題が収録されているものに挑戦してみよう。
計算で要求されるのは正確さと速さの2点。 まずは正確さを追求するのが賢明だ。
速さは、たくさん演習していけば次第に向上されるので、いま焦ってスピードにこだわる必要はない。
正確に、でも可能な限り工夫して計算してみよう。 程よい難易度の問題を、全分野に渡って多数解く。
その際、まずは正確さ、余裕が出てきたらスピード向上に努めよう。 それが計算練習方一番の方法だ。
思考力
計算力のみならず、問題解決の手段を考える力も必要で、これは先ほど「思考力」と呼んでいたものだ。
これを鍛えるにはどうすれば良いだろうか。 端的にいうと、思考力は複雑で難易度の高い問題を解くことで養成できる。
公式を1,2度用いて終わり、という問題で思考力を鍛えられないのは想像に難くない。
一目では解法がわからず、自分で組み立てて行くしかないような問題で初めて思考力を使うのだ。
問題の難易度というのは、たいていの場合計算の難易度のことではなく、方針立ての難しさに依存している。
計算が平易であっても、どう解けば良いのか不明なものは難問だ。
たとえば先ほどの直方体の問題で、もしいきなり垂線の長さを問われたらこれを解くのは容易ではない。
まず錐体の体積を求め、底面積を求め、そしてようやく垂線の長さが出る。
こういう問題を解き慣れている人であればなんとかなるわけだが、初見でこの問題を解くには結構な思考力が要求される。
教科書の章末問題や参考書の標準的なレベルの問題が解けるようになったら、どんどん高難度の問題にチャレンジしてみよう。
自分の独力では解けないような問題と必ず出会うはずだ。 そういう時に、すぐに解説を読むのではなくしばらく自分で考えてみる。
その粘り強く考える力こそが思考力の源であり、入試本番でも大いに役立つ。
Benesseでは、解答解説を読んで良いタイミングを以下のようにアドバイスしている。
【解答(教科書,参考書)を見てもよいとき】
- 20〜30分考えても解法が思い浮かばないとき。
- 使う公式はわかったけど,公式を忘れてしまったとき。
- もう思いつく解法をすべて試してしまったとき。
最初から解答を見てしまわないで、以上のような条件を満たしたときに必要な情報のみを解答から得るようにしよう。
記述力
ここまでは問題をどのように解決するかという話題であったが、それをどう表現するかも大切で、記述力はこのことをいう。
生徒の試験答案を見ていると、せっかく理解できているのに答案の書き方が下手で印象を悪くしている場合が多い。
幾つが原因はあるが、最も大きな要素は「計算と考え方の配分」だ。 計算するだけの問題は別として、通常は考え方も述べなければならない場合が多い。
それなのに細かい式変形を全て答案に記してしまい、肝心の記述(日本語)が少なくなってしまっているのである。
特に場合の数や確率などは、いきなり計算を始められても「何だ、この計算は?」と思われてしまう。
今自分はどういう風に考えて、したがってどういう計算をしているのか。 最低限それが明瞭な答案を作ることが重要だ。
自分が理解できるかどうかではなく、採点官が一目で理解できるかどうか。 実際の入試で大事なのはそこだ。
自分自身の答案は理解しやすいものである。 なぜなら、自分がどういう思考過程を経て答案を書いているか知っているためである。
しかし採点官はあなたの答案を採点する時に初めて見る。 あなたが試験の場で何を考えたのかを知るすべはない。
参考にできるのは、答案に書かれていることのみで、それだけであなたの点数が決まってしまうのだ。
当然のことかもしれないが、それを肝に命じておこう。 答案の書き方を練習する最善の手段は、何より他者に見てもらうことだ。
学校の定期試験では、丁寧に答案を書くよう心がける。 そうすれば、先生はあなたの答案を細かくチェックしてくれるにちがいない。
あるいは模試を活用するのもありだ。 記述問題が多い模試に挑戦し、自分の答案がどれほど通用するのか試してみる。
信頼できる模試を選び、自分の答案を評価してもらおう。 これは、数学に限った話ではない。
そもそもどのような答案を目指せば良いのかわからない場合は、参考書や模試の解答例を見てみよう。
そこに載っている例は、大抵優秀なものである。 その答案と自分の答案をよく見比べ、自分の答案には何が足りていないのか、逆に何を必要以上に書いてしまっているのかよく分析するのだ。
自分一人で開拓するのはかなり大変だ。 参考書でも、模試でも構わないから、何か頼れるものを見つけてそこから学んでいこう。
まとめ
数学の問題の解き方について説明してきた。 ここまで述べたことはどれも、理系・文系、数学の得意・不得意に関係なく重要。
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