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【完全版】赤チャート(数研出版)のレベル、難易度と効果的な使い方

2022年06月03日 | 数学

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今回の記事では、数研出版の「赤チャート」を紹介する。

数研出版の「チャート式」シリーズは、多くの生徒が活用している、人気の参考書だ。

「赤チャート」は、シリーズの中で最も難易度が高い。

非常に難しい問題ばかりを扱っているため、数学の基礎固めが完了している人でないと解き進めることはできないだろう。

しかし、良質な参考書であるため、数学の実力がある人にはおすすめできる1冊だ。

この記事では、「チャート式」シリーズの他の参考書との比較も行うので、「どれを選べばよいか分からない」という人にもぜひ一読してほしい。

鴨井 拓也(塾長)
鴨井 拓也(塾長)

特に青チャートと赤チャートの違いを知りたい人、多いと思います。ここで詳しく解説していますので、どちらを選ぶのかじっくり検討してもらえたらと思います。

赤チャートの基本情報

まずは、「赤チャート」の基本的な事項を確認しよう。

  • ジャンル…数学の網羅系参考書
  • 目的…教科書レベルから超難関大レベルまで引き上げる。
  • 対象者…難関大学の理系志望者
  • 使用時期…基礎固めが完了後、共通テスト演習で8~9割取れるようになった段階で、2次試験対策として活用。
  • 問題数…数学ⅠA・ⅡB・Ⅲの各分野900問程度(合計約2700問)
  • おすすめ度…★★★☆☆

赤チャートの特徴

次に、「赤チャート」の特徴について説明する。

「チャート式」の他の参考書との比較もするので、違いを理解してほしい。

東大・京大レベルまで対応

「チャート式」シリーズの基本的なラインナップは、白・黄・青・赤という4種類だ。これらは、難易度別で分かれており、白から順に難易度が高くなる仕組みになっている。つまり、「赤チャート」はシリーズの中で最高難度の参考書という位置づけである。

ちなみに「黒チャート」というものもある。これは医学部向けで、白・黄・青・赤とは趣が異なるものだ。

これらのシリーズの中で「赤チャート」の強みと言えるのは、日本の最難関大学である、東大や京大の理系の入試までしっかりとカバーできるということだ。

以前までは、難しい問題ばかりで、基礎的な問題はほとんど扱っていなかった。そのイメージを持っている人は多いだろう。しかし最近の改訂で、最高難度の「赤チャート」でも基本問題を取り入れるようになった。

現在、少しではあるが、基礎レベルの問題も載っているため、難しい問題でつまずいたときには、一度立ち戻って学習することもできる。

難しい問題ばかりではない。

赤チャートというと、チャート式シリーズで一番難しいというところからとにかく難しいというイメージあるのではないだろうか?

それこそ、昔は実際にそのような構成だったようだが、現在は全く異なる。

例題だけ見ると青チャートと構成こそ違えど、ほとんど収録されている問題のタイプは同じだ。赤チャートも本当に簡単な計算問題こそ省略されているものの、教科書レベルの問題から収録されている。

そのため、決して難しいだけの参考書ではないのだ。

青チャートと赤チャートとの違い

それでは青チャートと赤チャートの違いはどこにあるのだろうか?

以下の点が主に異なる点である。順番に確認してもらえたらと思う。

構成の違い

青チャートは基本例題、重要例題、補充例題と続き、その後EXERCIZE、章末問題と続く。

段階に応じて、少しずつレベルを上げながら問題を解いていくという構成になっている。

一方で赤チャートは例題ごとに教科書レベルと教科書のレベルを超える問題で色分けがなされているが、基本例題が終わってから重要例題という構成ではなく、学習上関連のある内容であればいきなり教科書のレベルを超えた例題が収録されている。

青チャートは使用用途に分けて使いやすいように構成が工夫されているが、赤チャートは最初からあくまでも入試対策を含めて対策する人向けに構成されていることがよくわかる。

一方で例題のレベルはさほど変化がない。

練習問題の難易度差

最も大きな違いは、下の練習問題の難易度の差だ。

青チャートの練習問題は例題が身についたかどうか、数値を変えただけの問題か、若干出題の仕方は変えるものの、難易度にそこまで大きな差がないような問題が中心に採用されている。

あくまでも反復用の問題というイメージだ。

一方で赤チャートの場合、そもそも一つの例題に対して練習問題が2,3問ついていることはザラだ。

単純な反復用の問題だけではなく、例題で扱ったテーマをもとに、それを応用させる問題であったり、入試問題として出題された問題が多く収録されている。ここが一番大きな特徴であり、青チャートとの違いだろう。

日頃の学習から入試問題を意識した問題が解くための教材となっている。

解答解説に問題文が載っていない。

まあこれはさほど気にする必要もない気がするが、赤チャートの解答解説には問題文が載っておらず、そのまま解答解説が載っている。

だからといって、何か困るということもないのだが、一応青チャートとの差ということで言及しておいた。

本質的な解説

赤チャートの特徴の話に戻ろう。

3つ目の特徴は、解説が詳しいことだ。

非常に難しい参考書だというイメージを持つ人が多いが、意外にも解説は非常に詳しくわかりやすい。「赤チャート」だからと言って、上級者向けに最低限の解説しか載っていないということは決してない。

ただし、詳しく解説されていても、数学があまり得意ではない人にとっては難しい内容かもしれない。

どういうことか説明しよう。「チャート式」シリーズの参考書は、どれも解説が詳しく分かりやすいことが特徴だ。レイアウトもほとんど変わらない。違うのは、解説の内容だ。どこまで深く内容を掘り下げて解説するかということが異なってくる。

例えば「青チャート」では、「この問題はどのように解いていくのか」という途中のプロセスを中心に詳しく解説してある。

一方「赤チャート」では、数学的な本質的なところにより重きを置いてしっかりと解説してあるのだ。

数学が得意で、表面的な知識より本質的なことを捉えたいという人には、「赤チャート」の方が向いている可能性がある。

逆に、あまり数学が得意でない人にとっては、数学の本質的なことを解説されても余計に難しく感じてしまい、かえって理解が進まないかもしれない。

自分の現状に合わせて慎重に参考書選びをする必要があるだろう。

チャート式シリーズ比較

「チャート式」シリーズのように、同じシリーズで似たような参考書が複数あると、どのように選んだらよいのか迷ってしまうものである。

過去の記事で、「チャート式」シリーズ4種類の参考書を比較して解説した。どの参考書を選べばよいのか、それぞれの特徴を紹介しながら解説しているので、ぜひ参照してほしい。

赤チャートの使い方

次に、「赤チャート」を入試対策で活用していく際の、有効な方法を解説していく。

例題を自力で解く

各単元の冒頭ではまず、その単元で使用する公式や定理、理解しておくべき要点が書かれている。要点をしっかりと覚えられているのかを確認し、頭の中で整理するのに使うと良い。

その後、例題に入っていく。例題を解くときには、自力で解くことが重要だ。

数学のようなアウトプット系の科目で演習するときには、自力で解くということは非常に重要である。なぜなら、アウトプット力を鍛えるには、自力で解いて演習するしか方法がないからだ。

良くある間違った学習法は、分からないと感じるとすぐに答えを見てしまうことだ。答えを見て解法を丸暗記して、演習したつもりになっている。しかし、解法を丸暗記したところで、定期試験でしか点が取れない。定期試験では点が取れるのに、模試や入試問題などの初見問題が一切解けないという人は、大抵、この間違った勉強法を行っている。こういった勉強法は直ちにやめることだ。

もちろん、定理や公式、問題の解法や解き方の糸口など、インプットするべきことはある。だから、数学の基礎レベルの問題も分からない人は、むしろすぐに答えを見るべきだ。インプットするべき定理や公式が抜け落ちているかもしれない。必要な情報をインプットするのが先だ。

基礎レベルの問題が解ける人であれば、十分に、標準レベルの問題を自力で解ける可能性がある。分からない、難しいと思っても、最低5分から10分くらいは自力で考えてみることだ。時間をかけてでも自力で考えて解くことを心掛けてほしい。

インプットした知識を使って状況をイメージし、自分の頭で解いていくというアウトプット力こそが、数学では重要である。

アウトプット力を鍛える唯一の方法は、自力で解くことだ。

解説で解き方を学習

自力で問題を解いた後は、解説を読む。

そのとき、答えが合っているかだけでなく、途中のプロセスが合っているかどうかも必ず確認してほしい。

答えにたどり着くまでのプロセスを正しく組み立てることが、入試で得点を取るための方法だ。プロセスが最も重要である。

解説をしっかり読み込んで、なぜその解き方をしているのかを理解する。そして、解法や最初の糸口、重要なポイントをインプットして、次に同じ問題が出たときに実践できるよう対策する。

自分が作り上げたプロセスと、答えに書かれていたものがずれていないかも確認すると良い。

自分なりの解き方の方がやりやすいのであれば、そのやり方のままで良いだろう。ただし、「チャート式」の解答は、最も効率的で正攻法のプロセスであるため、まずはその方法を理解することが重要だ。

反復演習

1度解いただけでは学んだ内容を忘れてしまう。反復演習が重要だ。

全ての問題を反復していたら時間が足りない。容易に解くことができて、かつプロセスも合っていた問題は1度解けば良いだろう。

しかし、プロセスが間違っていたり、初見で解けなかった問題に関しては、反復演習が必要だ。1度解いて、解説を確認したら、すぐに自分で手を使って解き直す。その日の学習が終わったら、再度、手を使って解き直す。その日の内に最低2回は手を使って解き直すことが重要だ。

その日以降も何度も反復演習することで、やっと学んだ内容の定着が望める。ただし、3度目以降は手を使わずに頭の中で想起するだけで十分だ。問題を見て、その問題のポイントや、解き方を思い出しつつ、頭の中で解いていく。細かい計算はせずに、どうやって解くのかを想起する。

想起という方法は、最も効率的な反復演習だ。手を使う場合に比べて圧倒的に手間が少ないので、何度でも反復演習してほしい。

また、効率的に学習を進めるためには、「どの問題を解くか」にも工夫が必要だ。

網羅系参考書は問題数が多いため、全ての問題を解くのは不可能だ。全ての問題を解いたとしても反復演習の時間を確保できないのであれば、学んだ内容を結局忘れてしまい、意味がなくなってしまう。

よって、自分に必要な問題を厳選し、数を絞って、反復することが重要だ。濃度を濃くして勉強することを心掛けてほしい。1周目は、例題だけ解けば良い。その後、徐々に類題や章末問題にも取り組めば良いのだ。

練習問題や章末問題で力試し

各章ごとで区切れば良いと思うが、例題が仕上がったら次は下の練習問題だ。

青チャートの場合、例題が仕上がっていれば下の練習問題は反復形の問題が中心のため、カットしても構わないが、赤チャートは下の練習問題の難易度が上がっていることが最大の特徴であるといえる。

赤チャートを使う場合、下の練習問題を解かないと、この教材を選ぶ意味がないに等しい。

非常にボリュームがあるものの、じっくり下の練習問題を解いていき、例題で得た知識を正しく運用することができるかどうかを実際に解きながら検証していこう。

全ての練習問題を解くことができるようになれば、その時点でかなりの数学力がついていることは間違いないだろう。

これらが全て完了したら章末問題にトライすれば良いが、必ずしもそこまでやる必要もないというのが正直なところだ。他の教材にいくもよし、このままチャートで受験勉強をほぼ完結させるというのでも良いだろう。

赤チャートの注意点

「赤チャート」の活用を検討している人に、注意してほしいことがある。順番に確認してもらいたい。

数学力がある程度ないと手を出さない方がいい

基本問題も少しは載っているものの、練習問題に突入すると、難しい問題がかなり増えてくる。

超難関大学を目指すのでなければ手を付ける必要はないだろう。その場合は、「青チャート」や「黄チャート」で十分だ。

基本問題が少なく、標準問題から入ることになるため、基礎が固まっていない人や数学が苦手な人には、「赤チャート」にいきなり手を付けることはおすすめしない。急なステップアップは全く自分のためにはならない。解説を読んでも理解が難しいだろう。まずは基礎固めに時間を取った方が良い。

「赤チャート」を使うかどうか迷っている人は、まずは自分の数学の実力を冷静に見定め、慎重に検討することが必要だ。

練習問題をやらないと意味なし

例題だけではそれこそ青チャートと大差ない。

あくまでも下の練習問題が豊富というのが赤チャートの最大の魅力である。

つまり日頃の学習で赤チャートの下の練習問題をこなせるだけの時間と基礎学力があるかどうかというのが、赤チャートを選ぶ際に考えたいポイントである。

学校の定期試験、河合塾の全統記述模試程度であれば割と数学は余裕で、日頃学校で扱った内容をその時に一気に入試レベルに引き上げたい。そのような人が赤チャートを使うのが向いている。

しかし、練習問題の分量が非常に多いため、受験学年になってこの教材に手をだすのは非常に危険だろう。そういった意味で、赤チャートはかなり使う人を選ぶ教材となっている。

実際に私が赤チャートを使ってみての感想

私自身、高校1年生の時に青チャートと赤チャートで迷って、赤チャートを選択した。(2Bは別冊になっていたこともあり、青チャートを選択した。)

例題に関してはたまに計算がきつかったり、少し聞き方が厄介な問題があったなとは思うものの、ほとんど青チャートと変わらなかった印象だ。

しかし、長期休暇中に下の練習問題をやってみて、かなり分量が多かったり、ここで一気にレベルが上がって、非常に苦戦したのを今でも覚えている。

個人的には勉強には段階があると思っている。基礎固めのときはあくまでも基礎固めに絞って反復し、それが完了したら次のレベルに移るというようにして学習をすべきだと今振り返って感じている。

赤チャートはそういった使い方は不向きであり、また練習問題の量が多すぎて結局満足に仕上がりきらなかったと反省している。

そこで2Bでは青チャートに変更し、その後より学習がスムーズに進んだように思っている。

当時は若気の至りで見栄をはって難しいのにしたが、やはり自分のレベルに合わせたものを着実にこなす方が結局後から自分のためになるなという印象だ。

赤チャートとの類書との比較

次に、問題のレベルや形式が似ている参考書を紹介する。

数件出版 青チャート

「青チャート」はシリーズの中で最も人気がある。問題数が多く、基礎から難関大学レベルまで網羅している参考書だ。

この1冊があれば、基礎レベルの演習から、東大や京大の入試対策まで対応できる。これが人気の理由だろう。

「赤チャート」との違いは、先ほど述べた通りだ。大半の人には青チャートで十分というよりは、むしろ青チャートの方が使いやすいだろう。

鴨井 拓也(塾長)
鴨井 拓也(塾長)

実際に両方使ってみて、青の方が使いやすかったですね。

以下で青チャートの記事を確認することができます。

啓林館 Focus Gold

「Focus Gold」は、「チャート式」と同様の網羅系参考書だ。

問題数が「青チャート」よりも多く、問題が足りなくて困ることはないだろう。ただ、問題数が多すぎて、自分で選別するのが難しいという場合もある。

良い点は、解説に惜しみなくページを割いているところだ。

「チャート式」の場合、例題は1ぺージ以内に収まるようにレイアウトされているため、見やすいが、長い解説を載せることはできない。一方「Focus Gold」はページ数の縛りはなく、長い解説が必要な問題には2ページを使ってじっくり解説している場合もある。

また、「チャート式」は練習のボリュームが大きく、時間を取られてしまう。対して「Focus Gold」は、例題と同じくらいの労力で類題も解き進められる。

「Focus Gold」のコラムは、数学界で有名な方がコラムを書いていることもあり、それも見どころかもしれない。

どちらの参考書を選んでも大きな差はない。どちらかの参考書を学校が指定しているのであれば、それを使い続ければ良い。

東京出版 大学への数学 1対1対応の演習

「大学への数学」シリーズは、難易度ごとに参考書が分かれている。「基礎徹底」「1対1対応」「新スタンダード演習」「数学Ⅲスタンダード演習」「新数学演習」の4つだ。

それ以外にも、月刊の問題集や、特定の単元に特化した参考書もあるので色々と見てみると良いだろう。

シリーズの中でも有名なのが「1対1対応」である。1つの例題に対して1つの類題という形式となっている。例題でしっかりと解法を学習して、類題で自力で解くという、インプットとアウトプットのサイクルを回しながら学習できる。

このシリーズは、全て白黒のレイアウトで、かなり難関大学向けの参考書が多い。選ぶときには気を付けてほしい。

鴨井 拓也(塾長)
鴨井 拓也(塾長)

一対一は当時最もお世話になった数学の参考書でした。

癖があるので使う人は選びますが、合う人には神書です!

旺文社 標準問題精講

旺文社の「問題精講」シリーズの参考書は難易度で分かれている。「入門」「基礎」「標準」「上級」の4つだ。

「標準」と題しているが、実際の内容はかなり難しい。この1冊で、旧帝大や慶応大学、早稲田大学のレベルまでは対応できる。

「問題精講」シリーズは非常に解説が詳しいのが特徴だ。各問題に、方針立て、解説、プラスアルファの補足などの内容の解説が書かれている。解説の詳しさは定評があるシリーズだ。

「標準」は、数学ⅠA、ⅡB、Ⅲで1冊ずつに分かれている。問題数が多いため、時間がある人でないと、手を出せない。自分でやるなら、優先順位をつけて問題に取り組んでほしい。

鴨井 拓也(塾長)
鴨井 拓也(塾長)

一対一よりも基本的な問題を増やし、万人受けするのが標問ですね。慶早進学塾では浪人生によく使ってもらっています。こちらもおすすめですね。

赤チャートのまとめ

「赤チャート」は「チャート式」シリーズの中で最も難しい参考書だ。

基本的な問題も扱っているため、難しい問題しか載っていない参考書というイメージとは、実際は異なっている。

基礎的な内容も学習でき、解説も詳しい。

数学が得意な人には、本質に特化した解説が分かりやすく、素晴らしい参考書として評価されている。

数学があまり得意な人には向いていないが、数学が得意な人にはおすすめだ。

鴨井 拓也(塾長)
鴨井 拓也(塾長)

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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