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全部覚えなきゃいけないの?有機化学の覚え方と勉強法

2016年12月26日 | 化学

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有機化学は覚えなければならない情報量が多いため、学習が大変である。 暗記を得意としない受験生を中心に、苦手な人が多い。

有機化学は理論化学、無機化学と並んで大きな3分野の1つである。

センター試験を始めとする大学入試でも出題されないことはない。

そのため、化学を受験で使う人にとっては欠かすことのできない分野だ。

今回は、化学の中でも有機分野の勉強法・覚え方を説明していく。

暗記事項が山のようにあって大変だ、と絶望する人も多いが、工夫次第で賢く、効率的に勉強できる。

以下を読んで、できる限りスマート有機化学を勉強していこう。

 

有機化学とはどういう分野か

adrenaline-872345__340そもそも、有機化学とはどんな分野で、何が範囲なのか。

それを知っておくことで、勉強の方針を立てやすくなる。

具体的な学習内容、それに他分野との関係を述べていく。

 

有機化学の内容

有機は、先述のとおり理論、無機と並んで化学の3分野の1つである。

教科書等では、基本的に最後に学習する内容だ。

詳しい学習内容は次のようになっている。

  1. 有機化合物の特徴と分類
  2. 脂肪族炭化水素
  3. 酸素を含む脂肪族化合物
  4. 芳香族化合物
  5. 生活と有機化合物

啓林館の教科書「化学」より

化合物が含む元素・構造によって区分されている。

 

各分野の内容

有機化合物の特徴と分類」は、そもそも有機化合物はどういうものなのかを学ぶ。

大まかな特徴や代表的な化合物を学んだり、鎖式・環式などの分類を学んだりと内容は様々だ。

そのほか代表的な官能基とその性質も登場するので、のちの内容を理解するために欠かせない章である。

この章に一番多くの時間をかけるべきと言っても過言ではない。

脂肪族炭化水素」では、鎖式炭化水素とその性質について学ぶ。

アルカン・アルケン・アルキンの定義とその性質・反応がほとんどだ。

酸素を含む脂肪族化合物」では文字どおり酸素を含む物質を扱う。

いままではCとHだけだったものがアルコール、ケトン、カルボン酸などと一気に多彩になる。

今までよりも格段に広い範囲をカバーできるようになる。

芳香族化合物」では、ベンゼン環を有する化合物が出てくる。

反応や性質が複雑になるため、大学入試でも頻出の重要分野だ。

豊富な知識・確かな思考力の双方が要求されるので、心して学ぼう。

生活と有機化合物」では、発展的な内容として人間と有機化合物の働きを勉強する。

具体的には繊維や糖類といった高分子化合物を扱う。

これも、大学入試では応用問題として出題されやすい。 有機化学は以上のような内容になっている。

 

有機化学の特徴と留意すべきこと

 

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学習内容を把握したところで、次に有機の特徴を考えよう。

これも、勉強法を考える上でどうしても必要になる情報だ。

暗記することが多い

有機化学の一つの特徴は、覚えなければならない内容が多い点である。

初めのほうで有機化合物の命名法について習うが、これを理解しないと問題文が指示している化合物がわからないので問題を解きようがない。

そして、有機化合物には様々な官能基が存在し、それらが複雑に組みあわさって一つの物質を形成している。

各々の官能基の性質を知らないと、反応式をみたときになぜその反応が起こるのか理解できない。

それでは、反応式を丸覚えしたところで化学を理解したことにはならないのだ。

また、代表的な有機化合物については名称、構造式、反応を知っておかなければならない。

たとえばフェノールの合成法は単純ではないが、試験で頻繁に出題される内容である。

このように、有機分野では

  • 化合物の命名など「定義」に相当する部分
  • 官能基とその働きなど、物質の性質を左右する要因
  • 代表的な有機化合物と主要な反応

といったことを覚えなければならない。

 

考えることも多い

暗記することの多い有機だが、一方で考えることも多い。

代表的なのは、いわゆる「構造決定」の問題である。

構造決定とは次のような問題だ。

<例題> ベンゼンの一つの水素が置換された分子式C9H12Oで表されるアルコールがある。このアルコールには、構造異性体としてA,B,C,D,Eの5つが存在し、これらをおだやかに酸化すると、AとBからはアルデヒドが生じ、CとDからはケトンが生じた。しかし、Eからは何も生じなかった。 (中略) (1) アルコールA,C,Eの構造式を示せ。 (2) 化合物FとHの構造式を示せ。 …東京海洋大学の過去問より

このように、与えられた条件から化合物の構造を判断する問題である。

構造決定は、官能基や各種有機化合物の反応についての豊富な知識が要求される。

しかしそれだけではなく、自分が持っている知識と照らし合わせて考えられる構造を列挙し、どれが正しいのか冷静に判断する必要もある。

知識のみならず思考力も欠かせない分野なのだ。

このように、有機化学はある意味で高校化学の集大成で、いままでに習った内容がたくさん登場するのである。

有機化学を極めれば化学そのものに明るくなるし、大学入試でも得点源とすることができる。

 

手を動かす必要がある

もう一つの特徴は、手をたくさん動かさなければならないことだ。

たとえば上の構造決定の問題では、考えられる物質の候補を紙に全て書いてそこから絞り込まなければならない。

それに、組成式や分子式を決定するためには元素分析の結果から各元素の質量比を求める必要がある。

他にも、高分子化合物の分子量を計算するなど、有機化学では手を動かすことが他分野と比較してずば抜けて多い。

しかも、計算を工夫することで簡略化できる、というものはほとんど存在せず、これさえ知っておけば大丈夫、という便利ツールもない。

誰もが地道に構造式を書いたり計算をしたりしなければならないというのも有機化学のつらいところだ。

ここまでのまとめ:有機化学の特徴

有機化学という分野の特徴を説明してきた。

ここで一旦まとめておこう。

  • 暗記する事項が多い
  • 思考力も試される
  • 図や計算など、手を動かす量も多い

簡単に言えば、有機化学は「疲れる」分野だ。 それゆえ対策をするのにも苦労が必要で、苦手意識を持つ受験生は少なくないのが現状だ。

 

有機化学の内容を効率的に覚えるには

 

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有機化学には、先述の通り暗記事項が多数存在する。

それらを正確に、かつ素早く覚えていくにはどうすればよいか見ていこう。

いくつかのステップに分けて、具体的な内容にも言及していく。

 

命名法はサッサと身につける

まず初めに覚えなければならないのが命名法だ。

有機化合物にはIUPACという組織によって統一化された命名法が存在する。

そして、主要な化合物には一般名も付いている。

これらを覚えないことには、教科書や参考書を読んでも「あれ、この物質ってなんだ?」と毎回立ち止まる羽目になる。

それでは効率が極端に悪くなるし、モチベーションの低下に繋がるのは明白だ。

したがって、化合物の名前についての基礎知識は優先的に勉強しよう。

早く他の分野に進みたい気持ちはどうしても生じるが、それをグッとこらえていまは名前に集中する。

逆に、命名の基礎が固まればあとは教科書も参考書もスムーズに読んでいくことができる。

 

様々な異性体を知る

異性体についての記述はどの教科書にも必ず載っているが、抽象的な話が中心なのでどうしても軽視されがちである。

しかし、実際の大学入試を考えると異性体の知識は不可欠である。

というのも、難関大学ではしばしば異性体の構造決定問題が登場する。

同じ分子式で、反応の違いから構造式を区別するというものだ。

入試で差がつくのはこのような複雑な問題である。

実際、上に示した大学入試問題も異性体の構造決定がメインである。

異性体の種類そのものはさして難しくないが、実際の入試問題ではこのようにより高度な形で出題されるもの。

その場では平易な内容に見えても、甘く見ないように注意しよう。

 

官能基の特性を知ろう

反応を理解するうえで、この「官能基」は最重要だ。

高校化学では、アルデヒド基、カルボキシル基、スルホ基…と多くの官能基を学ぶ。

これらが各々どういう構造で、どのような性質があるのかを勉強しよう。

たとえばアルデヒド基-CHOが酸化されるとカルボキシル基-COOHになるというのを知っていないと解けない問題はたくさんある。

種々の芳香族化合物の反応にも官能基は密接に関係している。

ポリエチレンテレフタラートは、2種類の官能基が縮合を繰り返してできる物質であり、各々の官能基の反応性がわかっていないと高分子になる理由が見えない。

こうした理由で、官能基を理解することは多数の化学反応を理解する礎なのだ。

基本知識であるため、早期にまとめて覚えてしまおう。

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たくさんの物質と反応を知ろう

官能基の特性までが、言ってみれば有機化学の準備段階である。

ここからは、いよいよ具体的な化合物の学習に入る。

まず初めにCとHのみの脂肪族化合物。

元素が2種類しかないので難易度は低いが、以降に登場する様々な化合物の起点とも言える物質群だ。

炭素骨格の種類を学んだり二重結合・三重結合の存在を知ったり、得るものはたくさんあるので気を抜かないように。

その次に酸素原子Oが加わる。 これにより物質のバリエーションは突如増える。

アルコールとアルデヒド、カルボン酸の定義と性質は重要事項だ。

特にアルコールは1級、2級、3級アルコールというクラスによって反応性が異なり、入試でも狙い目となる。

「1級アルコール→アルデヒド→カルボン酸」のような酸化の過程を中心に勉強すると良い。

 

芳香族化合物は基礎知識の徹底を

脂肪族が終わったら芳香族化合物。 安息香酸やフェノールなど、対象となる化合物は多岐にわたる。

あまりに数が多いので、化合物や反応の全てを覚えるのは不可能だ。

そこで、はじめのうちは主要な化合物の知識を深めることにしよう。

真っ先に取り組むべきはフェノール、安息香酸、ニトロベンゼンあたりだ。

これらの構造、性質、反応性を知っておくだけで、初歩的な問題は解けるようになる。

あとの細かい知識は教科書を読んだり問題演習をしたりしながらのんびり覚えていけば良い。

 

構造決定はよく考え、数をこなそう

一通り化合物の勉強が終了したら、いよいよ構造決定の問題を解けるようになる。

有機の大学入試では一番差がつくと言って良い構造決定。 攻略のコツは、

  • よく考えること
  • 数をこなすこと

の二点だ。

構造決定の問題の特徴は、解説を読めばだれでも理解できる点である。

脂肪族、芳香族の性質を理解していれば、解説を読むのに苦労することはありえない。

ではなぜ差がつくのかというと、それは「考える」ことが難しいためである。

原理上は誰でも解ける。

しかし、与えられた条件から考えられる構造式を全て列挙し、少しずつ絞りこんでいく。

問題文中のどんな情報も見落としてはいけない。

これらの要素が構造決定の難しさだ。

したがって、自分の力で考えることを優先し、やすやすと解答解説を見ないように心がける。

そして、構造決定は数をこなすのも重要だ。

経験値の多さが、問題を見たときの思考の速さ・ひらめきに直結するためである。

数問解いてたまたま正解できたとしても、構造決定は攻略できているとは言えない。

応用問題になっても、あるいは原子の数が多い複雑な問題になってもなお安定して解けるようにするには、場数を踏むことが何より価値を持つ。

演習の際には、質の追求もさることながら量の追求も忘れずに。

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高分子は余裕ができてから

最後に、糖や繊維、アミノ酸といった高分子分野が待っている。

だが、この分野の勉強をするのはここまでの内容がある程度身についてからで構わない。

大学入試でも優先すべきは単純な化合物の性質や構造決定であり、高分子がメインになる可能性は低い。

それに、ここまでの知識があやふやだとむりやり高分子の勉強をしても理解が進まないというのが正直なところだ。

あくまで少し余裕が出てからにしよう。 高分子は何を覚えて何を覚えなくてよいのか悩ましいのが難点である。

基本的な方針としては、グルコースやナイロン6、それにアミノ樹脂といったメジャーなものを覚えれば良い。

教科書中に幾度も登場するものだけカバーしておけば十分だ。

よほど時間に余裕ができたら、細かい糖類や繊維類を勉強すれば良い。

メジャーなものを覚えておくだけで、入試問題はある程度解けるようになる。

 

その他注意点

有機化学を学習する際は、以下のことに注意しよう。

  • かならず構造式を書く
  • 計算は丁寧にし、単位を忘れない

構造式を欠かさず書くというのは大切なことだ。

何より、化合物のイメージを豊かにすることにつながる。

文章で「エタノール」と書かれるよりも、ちゃんと「CH3-CH2OH」と書かれたほうが構造が一目でわかるし、反応性についても推測することができる。

構造決定の問題では、考えられる化合物の形態をすべて書くようにしよう。

頭の中で考えるのはミスの元になる。 また、有機分野でも計算問題は多い。

元素分析から分子式を推定したり、高分子の合成に必要な材料の量を聞かれたりと様々だ。

そういう問題で、勘違いや計算ミスにより失点してしまうのはくだらない話だ。

したがって、化学で計算をするときは必ず考慮過程、式を明記し、単位も忘れずに書いておこう。

日頃からその訓練をしておけば、いざ答案を書く段階になったときに自然と読みやすい答案を作成することができる。

 

まとめ

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有機化学の学習内容と勉強法、覚え方についてまとめた。

先述のとおり有機化学は覚えることも考えることも多く、体力を使う分野だ。

したがって、受験が間近に迫ってから勉強を始めるのは危険である。

早い段階から、上に述べたような効率的な覚え方をしておくことで、焦らず着実に成績を伸ばすことができる。

有機は面倒であると同時に、努力が報われやすい分野である。

ぜひ有機分野をマスターし、大学受験化学の得点源にしてほしい。

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