月刊大学への数学(東京出版)のレベル、難易度と効果的な使い方
2022年05月24日 | 数学
今回の記事では、東京出版の「月刊 大学への数学」という雑誌を紹介する。
この教材は、毎月異なる数学のテーマを取り上げる月刊誌である。
正直なところ、大学入試の対策にはあまり向いていない。
ただし、受験勉強が完了し、余裕がある人にとっては良い学びを与えてくれる1冊である。
東京出版の「大学への数学」シリーズの他参考書と比較しながら、「月刊 大学への数学」について解説していく。
基本情報
まず、「月刊 大学への数学」の基本情報を確認しよう。
- ジャンル…数学の問題集雑誌
- 目的…数学の特定の単元を深く探求する。
- 対象者…受験勉強が完了して余裕がある人
- 使用時期…過去問で安定的に合格点が取れるようになったら。
- 問題数…70問程度
- おすすめ度…★★☆☆☆
特徴
「月刊 大学への数学」は「大学への数学」という人気シリーズの内の1つだ。
東京出版は、「大学への数学」シリーズの参考書を数多く出版している。
このシリーズは参考書のバリエーションが豊富であるため、参考書ごとの特色を理解し、自分に合った参考書を選ぶ必要がある。
「月刊 大学への数学」の特徴を3点挙げるので参考にしてほしい。
他の参考書の特徴についても、後の項目で解説する。
毎月違うテーマを掘り下げる
最大の特徴は、普通の参考書と異なり、問題集雑誌であることだ。
この教材は、毎月発行される、月刊誌である。
月ごとに異なるテーマを取り上げ、内容を深く掘り下げて解説している。
数学Ⅰから数学Ⅲまでの範囲について、様々なテーマをピックアップしているため、1年を通して取り組むことで全ての範囲が網羅できるようになっている。
特集/数ⅠAⅡ/数Ⅲ
この教材の構成を説明しよう。
まず最初に「特集」のページから始まる。「特集」では、数学ⅠからⅢまでの単元の中から1つをピックアップして、問題が出題される。解説を読むことで、その単元に関わる数学的思考法や、数学の本質的な知識を探求することができる。問題に対して、深く追及することができるのが特徴的だ。
「特集」の後に続き、数学ⅠA・Ⅱ、数学Ⅲの順に問題が掲載されている。
問題数は全体で70問程度だ。問題量の振り分けとしては、「特集」に約3分の1、数Ⅰから数学Ⅱまでの範囲で約3分の1、数学Ⅲの範囲で約3分の1となっている。それぞれ約25問ずつ収録されている。
数学Ⅲの問題が全体の3分の1程度を占めているため、比重は重めだ。
それ以外に、学力コンテストの問題が1セット、宿題が1問収録されている。宿題の解説は、翌月の紙面に掲載されている。
標準〜超応用レベル
問題のレベルは、基本問題から応用レベルとなっており、幅広い。特に、応用レベルの問題の比率が高い。
そもそも「大学への数学」シリーズの参考書は、旧帝大の中でも東大や京大などの最難関大学を目指す人や、国公立の医学部を目指す人など、レベルの高い人向けであるため、難しい問題ばかりが載っている。
学力コンテストの問題や数学オリンピックの問題も掲載されている。
高校生では太刀打ちできないような、難易度の高い問題も取り上げている。
また、数学だけでなく化学の特集のページもあり、幅広く色々な題材を扱っているところが面白い教材だ。
使い方
次に、「月刊 大学への数学」に取り組む際の、おすすめの活用法を解説する。
内容を読み込む
まずは、様々なトピックを読み込んで知識を吸収するところから始めよう。
通常の参考書と異なり、この教材は講義系の参考書だ。
通常の参考書のように、問題を解いてその後に解説を読むという流れではなく、知識を吸収してから問題を解くという流れで取り組むのが有効である。
トピックのページを腑に落ちるまで読み込むことが重要だ。
問題を自力で解く
知識が深まったら、次は問題を解いていく。
自力で解くことをなによりも大事にしてほしい。
自力で解くことの重要性を理解できているだろうか。
数学を含むアウトプット系の科目で一番やってはいけないのは、自力で解こうとせず、すぐに答えを見てしまうことだ。
すぐに答えを見てしまえば、その問題の答えを暗記することはできるだろう。しかし、答えの丸暗記をしても、数学の実力には何もつながらない。暗記系の科目のように学習してしまうと、肝心のアウトプット力が鍛えられないのだ。
学校の定期考査では点が取れるが、模試や入試問題では一切解けないという最悪の状況に陥る人は、このアウトプット力が鍛えられていない。
アウトプット力は自力で解いている間の脳の活動によって鍛えられていく。それによってしかアウトプット力を鍛える手段はない。
したがって、5分や10分という短時間でも自分の頭で考えて解くことが重要になる。
この教材には、非常に難しい問題も掲載されている。簡単に解ける問題はほとんどないと言って良い。
難しい問題でも、粘ってじっくり考えることだ。知っているパターンの問題でなくても、自分の引き出しを使って、アプローチの方法を導き出すスキルを身に着けるのも重要なことである。
分からない問題に突き当たっても、今までやってきた知識を組み合わせて、試行錯誤することでのみ、アウトプット力を鍛えることができる。
解説で思考法を理解する
問題を解いた後には、解説を読み込んで理解を深めてほしい。
問題が自力で解けた場合も、解けなかった場合も、解説文を読み込むことで多くの知識を吸収することができる。
しっかりと読み込んでほしい。
この教材は、1つの問題に対して深くまで掘り下げて、詳しく解説をしている。
1問の問題から知識を深く幅広く広げて、その単元の理解をも深めていくというところまで解説されている。
しっかりと読み込むことで得るものが非常に多い。難しい問題を解くのだから、たくさんのものを得てコスパの良い学習をしたいところだ。
できるだけ多くのものを吸収しようという心構えで臨んでほしい。
反復演習
全ての科目の学習に当てはまる勉強の基本であるが、反復演習をして定着を図ることが重要だ。
問題を1回解いて、解説を読んで理解したというだけでは、すぐに忘れてしまう。
1度学んだだけでは定着せず、忘れてしまうのが人間の脳である。数日経てば覚えていない。
内容を定着させるには、何度も反復する以外に方法がない。
1度解いたら、その日の内にもう1度、手を使って解いていく。後日以降は解き方・ポイントを想起することで反復をおこなってほしい。そうすることで勉強効率が大幅に向上する。
この反復演習によって、類題が出たときにも、解法をすぐに思い出すことができ、迷わずに手を動かすことができるようになる。
反復演習は、受験勉強の対策として必ず行ってほしい勉強法だ。
注意点
大学入試対策には向かない
「月刊 大学への数学」を活用するかどうか検討している人に注意してほしい点がある。
この教材は、大学入試の対策として使うには難点がある。
参考書ではなく雑誌であるため、そもそも大学の入試対策のための教材としては作られていない。「大学への数学」シリーズの中で、最も大学入試の対策として使うには向いていない教材だ。
毎月発行され、テーマが毎月バラバラであるため、網羅的に学習ができない。
また、基礎的な問題も載っているものの、大半は難易度が高い問題である。そのため、基礎の問題を数多く解くことで基礎固めをしてから、応用問題を解くという勉強法ができない。様々な解法を網羅的に学習できないため、唐突に応用問題を解かなければならず、学習が困難になる。
大学入試の対策というよりも、大学に入った後や大人になってから、手に取るような雑誌だ。
よって、大学入試の対策が十分にできていない人は、この教材に手を付けるべきではない。
大学入試の対策が終わって余裕のある人が、プラスアルファで勉強したいという場合には取り組んでも良いだろう。数学の様々な単元について、より知識を深めるには良い教材だ。
大学入試の対策として有効な参考書は他にもある。次の項目で解説していく。
類書との比較
「大学への数学」シリーズは、非常に有名で、難関大学を目指す人には人気のシリーズだ。しかし、種類が多いため、その違いが分からず戸惑う人も少なくない。内容や違いを整理して紹介する。
東京出版に似た名前の会社で、東京書籍がある。教育関係の参考書を幅広く出版しており、創立も古く規模も大きいのが東京書籍だ。
対して、東京出版が出している参考書は「大学への数学」シリーズだけである。旧帝大や医学部を狙う人が活用するシリーズだ。どれも応用レベルで難しい参考書である。
難点としては、レイアウトが白黒で見にくいという点だ。
また、解説の内容は詳しいが、数学の本質的な内容など深い知識にも触れているため、基礎固めができている人でないと読み解くのが難しいだろう。
利点としては、参考書のバリエーションが多いシリーズであるという点。受ける大学や、今の自分のレベル・苦手単元等の様々な状況に対応できる。公式ホームページには参考書の情報が載っているため、自分に合った参考書を調べてから取り組むようにしてほしい。
スタンダードなルートは、まずは基礎固めとして、「入試数学の基礎徹底」に取り組む。その後、「1対1対応」シリーズで演習を積むことで、基礎から標準レベルまでの、よりしっかりとした基礎固めができる。
続いて、「新数学スタンダード演習」「数学Ⅲスタンダード演習」に取り組む。2次試験で難しい問題が出題される大学を受験する人向けの参考書だ。
さらに難易度の高い応用レベルに対応するためには「新数学演習」で演習を積む必要がある。「新数学演習」は東大や京大、一橋大学などの最難関大学を受ける人向けだ。
以上の流れが、スタンダードなルートの1つである。
また、東大数学や京大数学、医学部の数学など、特定の大学や学部の入試対策に特化した参考書もある。「マスターオブ整数」「思考力を鍛える不等式」などの、単元に特化した参考書もある。様々な活用の方法があるだろう。
数学が得意な人は、大学への数学シリーズを活用することで、難しい数学の入試問題にも対応できる実力が身につくだろう。
全体の説明はこれくらいだ。次に、東京出版の「大学への数学」シリーズの参考書を3冊紹介する。
東京出版 大学への数学 1対1対応の演習
この教材は、基礎から標準レベルである。
「1対1対応」というタイトルは、例題1つに対して類題が1つ載っているという意味だ。
例題を解いて解法をしっかり学んで、類題を自力で解くという方法で学習することで、解法を定着させることができる。
東京出版 大学への数学 新数学/数学III スタンダード演習
「1対1対応」が終わった後に取り組むべき、応用レベルの参考書である。
大学の過去問が収録されている。
2次試験への数学力を高めるために活用すると良い。
東京出版 新数学演習
特異的な難しい問題や、応用力が試されるような問題がたくさん掲載されている。
思考力を鍛えて、入試対策の最終段階に数学の実力を極めていきたい人におすすめだ。
この参考書は、東大・京大・一橋大といった超難関大を受ける人のみ手にとってほしい参考書である。
まとめ
「月刊 大学への数学」は、毎月出版されている問題集雑誌だ。
他の参考書と比べると特殊な参考書となっている。
各単元の知識を極めることはできるが、大学入試の対策としてはあまりおすすめできない。
「大学への数学」シリーズの他の参考書を調べて、自分に合うものをしっかりと選んでほしい。
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