【攻略】慶應義塾大学法学部(慶法)の論述力(小論文)の傾向と対策
2021年06月04日 | 慶應義塾大学
小論文は慶應義塾大学では多くの文系学部で出題される。
経済学部では70/420点と得点は低めではあるが、文学部では100/350点、環境情報学部・総合政策学部では200/400点を占めている。
その中でもとりわけ法学部は小論文という科目名ではなく、「論述力」として設定されている。
だが、内容は小論文と捉えてもらって問題ない。
そして慶應法学部の論述力は、他の学部と比べるとかなり難易度は高いと言えるだろう。
そのため、この論述力はできる人とそうでない人の間には雲泥の差がつくと思われる。
さてこの記事では、慶應法学部の論述力の傾向と対策についてどこよりも詳しく伝えていく。
慶應法学部を受験予定の人はこの記事を読み、どのように対策をしていくといいのかを学んで日頃の勉強に生かしてほしい。
慶應法学部論述力基本情報
まずは慶應法学部の論述力に関わる基本情報から確認していこう。
配点
- 英語200点
- 歴史100点
- 小論文100点
上記の配点で400点満点のうち、論述力は100点である。
受験者平均点、合格最低点
法学部の受験者平均点、合格最低点は以下のようになっている。
法律学科
年度 | 論述力・受験者平均点 | 合格最低点 |
2020 | 47.27 | 252 |
2019 | 49.27 | 227 |
2018 | 48.36 | 246 |
2017 | 48.07 | 263 |
2016 | 47.92 | 242 |
政治学科
年度 | 論述力・受験者平均点 | 合格最低点 |
2020 | 48.44 | 258 |
2019 | 48.08 | 224 |
2018 | 50.15 | 249 |
2017 | 48.90 | 266 |
2016 | 48.08 | 249 |
合格最低点は年度によって差が激しいことがいえる。
一方で論述力はどの年も半分程度といったように、比較的安定しているように思う。
実際のところ出来の良い答案は相当得点が与えられ、出来の悪い答案はあまり得点が見込めないだろう。
この情報だけでも慶法にとって論述力攻略がどれだけ重要かが見えてくる。
制限時間
制限時間は90分である。
出題形式
長めのリード文であり、字数は1000字以内である。
前半の400字程度で要約形式の問いに答え、残りの約600字で自分の意見を論述するというような出題形式になっていることが大半である。
要約形式と言っても、要約することを直接問われているという設問ではない。
難易度
そもそもリード文が難解であるため、難易度は高い。
要約系の設問は比較的難易度は低く、文章を読んで内容を理解できると解けるような問題である。
意見を論述する設問では、自分自身の意見を構築していくため様々な能力が問われる。
難易度が高いからこそどのようにして攻略するかが重要である。
慶應法学部論述力の特徴
それでは具体的に慶應法学部の論述力の具体的な特徴について確認していこう。
法学部の論述力試験について
まずは実際の試験問題に記載されている注意書きを確認していこう。
この試験では、広い意味での社会科学・人文科学の領域から読解資料が与えられ、問いに対して論述形式の回答が求められる。
試験時間は90分、字数は1,000字以内とする。
その目的は受験生の理解、構成、発想、表現などの能力を評価することにある。そこでは、読解資料をどの程度理解しているか(理解力)、理解に基づく自己の所見をどのように論理的に構成するか(構成力)、論述の中にどのように個性的・独創的発想が盛り込まれているか(発想力)、表現がどの程度正確かつ豊かであるか(表現力)が評価の対象になる。
慶應法学部論述力の表紙より
上記が実際に入試問題の表紙に記載されている内容である。
順番に確認していこう。
1行目
広い意味での社会科学・人文科学の領域、と書かれてある。
そもそも法学は、扱う範囲が広い。色々な分野に関して法律が設定されるものであり、法律そのものだけを学べば良いということではないのだ。
そのため、法学部の論述力は多種多様な分野の文章が設定されるということだ。
2行目
制限字数、試験時間に関しては既に確認しているため、ここは問題ないだろう。
3行目
さて、ここが最も重要な項目である。
・読解資料をどの程度理解しているかという理解力
・理解に基づく自己の所見をどのように論理的に構成するかという構成力
・論述の中にどのように個性的・独創的発想が盛り込まれているかという発想力
・表現がどの程度正確かつ豊かであるかという表現力
の4点が評価とされている。
この4点を意識して答案を記述する必要性があるということをよく理解しておこう。
前半でのリード文の要約
さて、ここからは具体的な設問に関してである。
本文を要約することが設問で求められている場合、まずは何か条件が付いているのか、それとも単に本文を要約をすればいいのかをよく確認しよう。
そういった点で、様々なパターンがあり、広い意味での要約が求められる。
そして慶法の論述力はリード文が難解である。先ほど触れている通り、広い意味での社会科学・人文科学の領域から問題が出題されるため、毎年出題されるテーマは異なる。
2014年度はケアの倫理、2015年度は公共性とは何か、2016年度はグローバリゼーションや国際政治、2017年度は憲法論、2018年度は公共のための科学、などテーマは広いが毎年文章レベルは高度である。
後半での自分の意見の記述
前半で要約をこなすことができたら、次は自分の意見を記述するパートに移っていくことになる。
ここでのポイントは、争点を見抜く能力である。具体的に確認していこう。
何が争点なのかを見抜けるかが鍵
自分の意見を書くといったら、あなたはどのようなことを思い浮かべるだろうか?
何か好きなことを書けば良いと思ってしまうだろうか?
ここで、簡単に小論文という科目に触れておこう。
小論文も立派な受験科目である。ということは、小論文にも出題者から何かしらの要求があり、その要求を正しく満たせている答案は評価されるし、一方で評価されていない答案は評価されないということになる。
つまり、自分の意見を書くと一口にいっても、自分の意見を好きなように書いてもいいというわけではなく、何らかの問いに対して、その問いの要求を満たせるように、答えないといけないということだ。
ここまではよろしいだろうか?
具体的に例をあげよう。
例えば、「~ということに対して自分の意見を論じなさい」、「あなたの具体的な考えを論じなさい」など何らかの問いが必ず設定されている。
その問いを満たせるように、どのように文章を構築しないといけないのかを考えないといけないというわけだ。
そして、慶應法学部の論述力の問題には、難しく長いリード文と問われている設問の中で、何が争点であるのかを見抜けるかが問われているのである。
そもそも法学部は法曹関係を志願する人が多く、そのような人は単に知識を暗記するだけではなく、どのようにその物事を判断して運用するのかが求められているからだ。
それを論述力の試験を通してその能力があるかどうかを見ているのではないだろうか。
実際に2010年度の論述力の過去問を用いて説明していく。
[問題]
ヘラスと呼ばれていた古代のギリシアでは、異民族ペルシアの侵攻に際しては、すべての都市国家(ポリス)が、団結し立ち向かった。しかしペルシアの脅威が立ち去ると、アテーナイとラケダイモーンの2つの有力な都市国家を中心に形成された2つの陣営が、対立するようになった。すなわちアテーナイが強大化し、他の都市国家を圧迫するようになると、脅威を感じた年はラケダイモーンを後ろ盾にしてそれに対抗しようとしていた。アテーナイが着々と帝国主義的に膨張する中で、ラケダイモーンの同盟国であるコリントスは、アテーナイとの間で戦闘状態に入った。そしてコリントスは、それまで存在していた両陣営間の休戦協定はもはや破られたとして使者を派遣し、ラケダイモーン市民にアテーナイに対する開戦を決意するように訴えた。
以下に掲げたのは、そのコリントスの使者の発言と、それに反論するアテーナイの使者の発言である。両者の発言を検討し、貴方がラケダイモーンの市民だったらどのような決定をすべきだと考えるかを、自分なりに論じなさい。なお、解答にあたって史実との適合性を考慮する必要はない。
2010年度慶應義塾大学法学部論述力より引用
まずはこちらの文章をよく読んでいただきたい。そして具体的な争点の見抜き方について確認していこう。
まず、この状況を整理すると、ラケダイモーンとアテーナイが対立関係にあり、一時的に休戦協定を結んでいるという状態である。
我々はラケダイモーン側の人間であり、コリントス側とアテーナイがラケダイモーンに対してメリットになるようにしてほしいと意見を述べる。
当然コリントスは同盟関係にあるため、自分を守ってほしいといってくるだけでなく、一方でアテーナイはラケダイモーンに邪魔されなくないためにうまくやってほしいと言う。
しかし、アテーナイとの休戦協定を破ることにもなり、ラケダイモーンにとってはどちらも無視することはできない。そこで考えないといけないことは主に4点ある。
- アテーナイとの休戦協定をどのように考えるか
- コリントスとの同盟関係をどのように考えるか
- ラケダイモーンの実利的な観点からどのように捉えるか
- 仮に、片方に肩入れしたと時にどのような反論が想定されるか、その反論を論理的な正当性で覆すことができるか
何も考えずにコリントス側につくことは、アテーナイとの協定を破ることになる。
勝敗の行方は不明だが、自国の損失は甚大なものになる。反対に、アテーナイ側につくことは同盟国を救わないということになる。
その場合、ラケダイモーンの今後はどのようになるのだろうか。
何が求められているのか、何が論点なのかを理解することが重要である。
この答えは設問者が求める要求を満たせるのか、ということを考えなければならない。
この争点を見抜いた際に、どのような立場を取り、議論を構築していくのかを出題者は聞いているわけだ。
ご理解いただけただろうか?
慶應法学部論述力の対策
それでは、ここまで話してきたことについて具体的にどのようなことをしていけばいいのかについて説明していこう。
小論文の基本の徹底攻略
いきなり法学部の過去問をやっても歯が立たない人が多いだろう。
そこでまずは小論文の基本を徹底して勉強する必要がある
小論文の基本は以下の2点である。
設問の要求に忠実に
自分が思ったことを何でも論じればいいというわけではなく、相手の要求に対して正しく理解して答えることで初めて相手の設問の要求を満たすことになる。
相手の要求を理解していない状態で書き進めていても点数にならない。
まずは、これをできるようになるための練習をしないといけない。
文章のアウトラインを作成する
いきなり文章を書いても、支離滅裂であったり、文字数不足または超えてしまったりなどの場合がある。
そのような事態を防ぐために、アウトラインを作成することができるようになることが大切である。
上記の2点を習得するために慶應経済学部の小論文の過去問に取り組むことをおすすめする。
実際に慶早進学塾では、小論文指導の際には慶應を受験する生徒には経済学部の過去問に取り組んでもらっている。
先程の基本事項は経済学部の過去問を解かせることで確認できるという優れものであるという点だけでなく、経済学部の小論文にも様々なテーマで出題されるため、経済学部の小論文の過去問を毎回活用していってほしい。
経済学部の小論文がある程度できるようになってから法学部の過去問に着手してもらいたい。
小論文の基本を習得するために、こちらの記事を必ず確認するようにしてほしい!
慶應法学部の小論文の過去問演習
慶應経済の小論文の過去問演習を行い、基本的な内容をおさえることができたら、いよいよ法学部に取り掛かっていく。
法学部の問題を解く上で、常に意識してもらいたいことが2点ある。
問題の争点を見破る
先程も述べたが、作成者が聞きたい争点が必ずある。
それがどの部分を見破って答えを出す必要があるのか、その争点をしっかり認識できるようになってもらいたい。
これができない場合、求めていることと異なってしまうため評価されないこともあるだろう。
論理的に文章を構築することはできているか
経済学部の小論文は指定されている文字数が少ないため構成力がたとえなくても特に問題はない。
しかし、法学部は1,000字で書く必要があるだけでなく、文章難易度も高くさらに争点を見抜く力も求められる。
それを相手に論理的に説得させるような文章にしなければならない。
そのように考えると、「論理的に文章を構築する」という力が重要になる。
例えば、具体例を根拠にしてしまい、自分が主張したいことの根拠になっていないという場合、具体例を根拠にすると自分の一般論が本当に正しいのかと言い切ることが困難になる。
そのため、「問題の争点を見破る」「論理的に文章を構築する」の2点を意識した上で過去問演習をやっていく必要がある。
添削指導は必須
最初からある程度できる人であればいいが、小論文をこれから対策しようと考えている人や小論文に苦手意識がある人は添削指導を受けた方がいいだろう。
特に、自分で書いた答案に対して正しく問題の争点を見破ることができているのか、議論は論理的なものになっているのか?など、どこに問題があるのかは模範解答を見ても分からないのではないかと思う。
様々な形での答案が考えられているため、自分の答案がどの程度の出来であるのかが分かりにくいということだ。
そのため、添削能力に優れた添削指導を受けることが重要である。
慶早進学塾では、小論文指導にかなり力を入れていることもあり、この指導によって合格を掴んだ生徒もかなり多い。
法学部の論述力は特に添削指導が必須。もし本気で慶法に受かりたい人はお問い合わせください。
慶應法学部論述力まとめ
以上が慶應法学部論述力の傾向と対策である。どこよりも詳細に解説したことと思う。いかがだっただろうか。
法学部の論述力はテーマのリード文が難しいだけでなく、そこから争点を見抜いて説得力のある文章にしていく必要がある。
表現力が高いものが求められているため、丁寧にひとつひとつに取り組んでいってほしい。
同時に、添削指導を必ず受けるようにしてほしい。
法学部に限らず、ぜひ慶早進学塾の無料受験相談や添削指導などを活用していただけたら幸いだ。
ご連絡お待ちしています。
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